Daily-EROtic 秋子

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「ん…」
 電気のスイッチを消そうとした祐一の手が止まる。
 もう夜も更けていた。外は当然真っ暗だし、家の中で電気が点いているのもこの台所だけだろう。祐一が夜中にトイレに行った後、喉の渇きを覚えて来たためである。そしてコップ一杯のミルクを飲み終わった今、祐一がここにいる理由もなくなっていた。
 パチ…
 電気を落とす。祐一の周りは暗闇に落ちた。が、台所に来るまでは闇の中にあった祐一の目は、すぐに電子レンジやヴィデオのわずかな明かりで歩ける程度の視界を確保していく。
「…なんだ?」
 祐一の耳に、ごくわずかな音が聞こえてきていた。静寂に満たされているからこそ気づいたような、非常に小さい音である。しかし、この真夜中に水瀬家で音がしてくるというのも不自然な話だった。名雪が寝ぼけているならもっと分かりやすい音がしそうなものだし、どたどたと階段を下りてくる音も聞こえてきそうなものだ。
 小さいながらもずっと続く音など、祐一には心当たりがない。音が小さすぎるために何の音なのかもまるで見当がつかなかった。
 どこかで蛇口が開きっぱなしになってるとかか…?
 しかし、祐一はトイレから帰ってきたのだから、風呂場や洗面所から音がしているならその時に気づきそうなものである。
「………」
 祐一は音のしてくる方に向かって、歩き始めた。正確に音源の方向がつかめるわけではないが、リビングに出ると玄関とは逆の方向から音がしてくる事だけは何とかつかめる。
 自然と忍び足になりながら、祐一は廊下に出た。開け放してあったドアも閉めず、廊下を歩いていく。
 さっき行ったトイレ、洗面所。洗面所は浴室につながっている。そして…
「起きてたのか…?」
 秋子の部屋。音源はここのようだ。
 普通に考えれば最初からそういう結論に達しても良かったような気はするのだが、どうも秋子がこの時間に起きているという実感が持てず、その可能性を除外してしまっていたのだ。夜11時には寝てしまって、朝の6時半には起きているのだから。
 その時間帯に秋子が部屋でどうしているのか、祐一は全く知らない。ただ寝ているぐらいにしか思っていなかった。そもそも祐一は秋子の部屋の中を見たことすらないのだ。
 祐一は、手をグーの形にして引き戸の前に持って行く。そして、軽く戸を叩こうとした。
「………」
 だが、その手が戸の直前でぴたっと止まってしまう。なぜだかは分からない。分からないが、祐一は手を開き、引き戸の取っ手に指を引っかけて、ほんのわずか横にずらしていた。
 ヴ…
 緊張しきった祐一の鼓膜に、鈍い振動音のようなものが響いてくる。さっきから祐一の感じていた音に違いない。戸を一枚開けただけなのに、その音はこれまでとは比べ物にならないほどはっきりと聞こえてきた。
 部屋は真っ暗ではない。蛍光灯についているオレンジ色のミニランプが点けられて、部屋を薄ぼんやりと照らしていた。
 秋子にかけようとした声が、喉の奥に沈み込んでいく。そして祐一はドアに掛けた指を少しずつ横にスライドさせ、自分が通れるくらいの隙間を作り上げてしまった。
 そこを通り抜けると、無意識のうちに息をひそめてしまう。身を小さくしながら、祐一は秋子の姿を探した。
 部屋は思っていたよりも広い。本棚や机や化粧台など、あまり祐一達の前では見せない姿を感じさせる家具がいくつか。そしてかなり大きめのベッドがひとつ。それを、入り口のすぐ横にあるタンスに隠れながら祐一は確認した。
 そのベッドの上には…人のシルエット。秋子に他ならない。当然だ。が…
 聞こえてくる振動音…妙にボディラインを感じさせるシルエット…それから、寝ているにしては不自然な体勢…
 思わず、祐一はタンスの陰からこっそりと一歩を踏み出してしまった。もっと近くに寄りたいという気持ちが抑え難く膨れ上がってしまったのだ。
「はっ…!」
 ビクっ!
 秋子の上げた鋭い声に、祐一は身を縮こまらせる。
「ゆ、祐一さんっ!?こ、これは…!」
「あ、秋子さん…」
 祐一は我に返って言った。
「あ、あのっ…」
 生まれて初めて聞く、秋子の取り乱した声だ。
「お、俺、外に出てますっ!」
 次の瞬間。祐一は自分でも驚くほどのスピードで身を翻(ひるがえ)し、部屋の外に飛び出していた。
「はぁ…」
 戸をぴしっと閉めて、祐一は大きく息をつく。
 色々な感情があったが、とにかく今は驚きが祐一を満たしていた。それも、突然名前を呼ばれたときに慌てたのが一番大きい。何も考えられないほど大きなショックだったのだ。
 しかし少しずつ落ち着いてくると、秋子がしていた事の意味がむらむらと祐一の中に沸き上がってくる。
「いいですよ…祐一さん」
 それを整理する前に、秋子が祐一を呼んだ。

「ご、ごめんなさい…俺、何かおかしな事が起こっているんじゃないかもしれないと思ってて」
「いいえ…」
 きちんとした夜間着に着替えた秋子が言う。
 だが顔の赤みは隠しきれていなかったし、どこか潤んだ感じの目もさっきの状態の継続を感じさせた。名雪が慌てた時の雰囲気に、ちょっと似ているかもしれない。親子の共通点はのほほんとした性格くらいなのかとも思っていたが、こんな所もやっぱり似ているのだ。しょっちゅう慌てている名雪と違って、秋子が落ち着いているだけの話である。
「え、えっと…秋子さんの部屋、結構広いんですね」
 秋子から視線をそらすように、祐一が部屋を見回す。
「元々は、二人でいた部屋ですから…」
「やっぱりそうなんですか?」
「ええ」
 つまり祐一の叔父だ。祐一が物心つく前に、この世を去っている。名雪はよく覚えているらしいが、祐一には記憶がない。祐一にとって、この家は名雪と秋子しかいなかったのだ。
「それで、その…」
 祐一は言葉をつなごうとして、詰まってしまう。一度詰まってしまうと、もうだめだった。取りつくろうとしても、どうしていいのか分からない。なぜ言葉に詰まってしまったのかは明白なのだ。
「え…ええ」
 しどろもどろになる祐一に対して、秋子がうなずいた。ここでうなずける辺りが秋子の度量の大きさなのかもしれないが、顔は真っ赤になってしまっている。
「そ…そうですか」
 祐一は頭をぽりぽりと掻きながら答える。そして秋子の事を見た。
 秋子はベッドに座っているので、必然的に祐一を見つめ返す視線は上目になる。下ろした髪と潤んだ目のせいで、元々若い容貌がますます年少のイメージになっていた。そこはかとない余裕をかもし出す雰囲気も失せてしまっている。
 ぐっ、と祐一が手をこぶしに握る。
 普段の秋子と祐一の関係からすれば、もう祐一は去るべきなのだ。何をしても一級の技術と心配りを持つ秋子、それを尊敬する祐一。それを考えれば、もうとっくに去って然るべきなのだ。
「…秋子さん」
「なんですか」
 しかし祐一は秋子の方に向かって歩み始めていた。
「横、いいですか?」
「え…ええ…」
 ベッドに腰掛けた秋子の横に祐一は座る。
 至近距離で見ると、秋子はさらに違って見えた。つややかな髪と、紅を帯びた滑らかな肌は20代と言っても通用しそうなくらいに綺麗である。何より瞳が美しかった。いつもは慈愛を感じさせる目が、場を変えるだけでこれほども女性的な魅力にあふれて見えるのは驚異としか言いようがない。
 それを数秒間見つめただけで、祐一の中で何かが動いてしまった。
「普段から…ですか?」
「えっ」
「普段から…」
「時々です…」
「週に、何回くらいですか?」
「祐一さん…」
 秋子の表情が苦しそうなものになる。
 今の祐一の質問は、尋問でしかない。ぎりぎり世間話の延長線で済んでいた会話が、そこから外れようとしているのだ。そうなれば、祐一と秋子の関係も変わらざるを得ない。
「…ごめん、秋子さん」
 それを感じとってか、祐一も謝った。
「いえ…」
「でも、秋子さん」
 祐一が、膝の上に乗せられてていた秋子の手の上に右手を重ねる。
「俺は、今の秋子さんが綺麗に見えてしょうがなくなっちゃってますよ」
「…祐一さん」
「叔父さんの代わりになりたいとかは思わないです。でも、いつもの秋子さんを見ている時には気づかなかったけど…俺、秋子さんが…ずっと好きだったのかもしれない」
「だめですよ…」
 秋子がするっと祐一の手から逃れる。
「だめじゃないですよ…」
 それを追って、秋子の手を祐一がしっかりと握りしめる。
「秋子さんは、俺のことが嫌いですか?」
「可愛い甥として…とても好きですよ」
「本当にそういう関係だけで好きなんですか?」
 祐一の事を、何か暗い感情が衝き動かし始めていた。何なのかは分からない。ただ、意識の奥、あるいは記憶の奥の中とでも言うような深層からの命令が今の祐一を支配していた。
「…だって、私と祐一さんは…」
「親子ってわけじゃない。姉弟でもないです」
「もうやめましょう…祐一さん、部屋に戻って寝ないと明日起きられませんよ?」
「やめませんよ」
「…あ!」
 祐一は強引に秋子の手を引っ張って、自分の股間に当てさせた。
「…いいですか?俺は本気です」
 そして秋子の手を離すと、自分の着ていたパジャマをトランクスごと脱いでしまう。
「祐一…さん…」
「あとは秋子さん次第です」
 祐一は下半身を剥き出しにしたまま、突然秋子の股間に手を伸ばした。
「…うっ…」
「脱いでください」
 ぐりぐりとそこを撫でてから、そう宣言する。
 そして祐一はベッドの上に乗ると、自分の身を横たえていった。天を仰いだ肉棒を隠しもせずに。
「きっと、後悔することになりますよ…」
「構いません」
 背中しか見えない秋子は、震えているようだった。

 足を広げた秋子が、肉棒を手で持って腰を落としてくる。
 鮮紅色の秘裂の内側が見えているのを隠しもせず、秋子はゆっくりと挿入口をペニスにあてがっていった。どこもかしこも、ぬらっとした半透明の液体に濡れて光っている。特に挿入口は今にも垂れてきそうなほど液体が豊富だった。
 ぬちゅっ。
 接触した瞬間、水音がして秋子が身を固くする。
「…祐一さん」
「してください、秋子さん」
 祐一が躊躇無く言うと、秋子は憂鬱さを帯びた顔を見せた。どれもこれも、秋子が普段見せたことのない顔だ。
 ぬぷるっ。
「…うっ…はぁ…はぁぁぁ…」
 そして秋子が腰をさらに落とし始める。液体のはぜる音と共に、祐一のペニスは秋子の中に飲み込まれていく。その入っていく部分の大きさに比例して秋子の脚も大きく開き、媚肉をあけすけに祐一の目に触れさせてしまっていた。
「はうっ…」
 最後にこつんと奥へ先端が当たり、秋子が小さくうめく。
「動いて下さいよ…」
 ぬぷっ…
「うんっ…」
 秋子が腰を持ち上げる。入れるときも抜くときも、祐一のペニスは秋子の中でうねうねと締め付けられた。もちろん、たっぷりとした熱い液体の感触もこれでもかと言うほど祐一の肉棒に絡みついてくる。
 ずんっ。
「はぁっ!」
 より強く速く腰を落とすと、秋子は自らもたらした衝撃に声を出した。そして荒くなった息を必死に整える。抽送が秋子に強烈な快感を与えているのは間違いない。
 ぬぷ、じゅぐっ。ぬぷ…じゅぐるっ!
「あっ、あっ、あぅっ」
 秋子が祐一の腹に手を当てて、リズミカルに腰を振り始めた。その度に秋子の中は柔らかく複雑に祐一のペニスを締め付け、未体験の快感を引き出してくる。秋子は顔をしかめていたが、性感を感じているのは確実だ。最初は探るようだった動きも、次第に秋子の中の特定の箇所をこするような動き方に変わってくる。
 それによって、熟し切った秋子のヴァギナは激烈な快感を生んだ。固くしこったクリトリスが祐一のペニスに触れる刺激と合わせて、秋子はどんどん乱れていく。
「秋子さん…気持ちいいっ」
「ゆ、ゆぅっ、祐一さんっ!祐一さんのがっ…奥に…」
 秋子は狂ったように腰を振り始めていた。恐らく、10年以上ぶりに男を感じたと言うことなのだろう。髪を振り乱しながら激しく奥に打ち付ける姿は、貪欲な女の姿でしかない。
「も、もう限界だっ…秋子さん!」
「私も…だめです…祐一さんっ…」
 性行為に未知な祐一と、既に十分すぎるほど高ぶっていた秋子の絶頂はちょうど合一を迎えようとしていた。
「一緒にっ…一緒に、秋子さんっ!」
 びゅぐっ、びゅく…びゅ…
 そして、祐一は激しいカタルシスを感じながら果てた。
「はっ…はぁっ…祐一さんのが中に出ていますよ…」
「秋子さんの中に…出てるんだ…」
「ええ…」
「俺…嬉しいです」
「祐一さん、昔はいい子だったのに…こんなに悪い子に育っちゃったんですね…」
「秋子さんが…」
「…私が?」
「…いや。なんでもないです」
 祐一は虚空を見据えながら言った。
「…祐一さん」
「はい」
「名雪に見つかったら大変です。後かたづけは私に任せて、部屋に帰ってください」
「わかりました…」
「おやすみなさい」
「ただ、俺は本気で秋子さんを愛してますよ」
「…祐一さん」
 ひくひくと痙攣し、繋がったまま、二人は話し続けた。


7/10
 何が原因だったか…
 祐一が秋子の前で、「背伸び」した事があったようだ。取り立てて大きな理由があったわけでもない、子供扱いされた事に対するちょっとした反発。この叔母の前でいつもいい子にしていた祐一が、少しすねた程度の事だ。年齢から見て、反抗期の萌芽であったと見てもいいかもしれない。
 実の母ではなく、叔母にそういう感情を見せつける辺りには、仕事であちらこちらを飛び回っている両親という背景もあったのかもしれないが…。母親を心の奥底で求める少年は、常にいるわけではない実の母親の前で悪い子になりきれなかったのかもしれない。
「こ、これでいいんですか」
 まだ声変わりすらしていない声が震えていた。
「いいわよ」
 それに対する声は、落ち着き払って優しい。普段と全く同じ調子の秋子の声だ。
 ふにっ。
「あっ……!秋子さんっ!?」
「じっとしていてね、ゆういち君」
「で、でもっ」
 祐一が戸惑いの声を上げる中にも、秋子の指は優しく撫で上げる。祐一のまだまだ小さい、未成長の袋の部分を。
「痛くはないでしょう?」
「いたくはないですけど、なんか、なんか変です…っ」
 祐一は自分のペニスが変化を見せつつあるのを、体内感覚からも視覚からも認知しつつあった。柔らかかった部分が、段々と熱を持ち、さらには膨らみを見せ始める。そして、ぐぐっ、ぐぐっと、少しずつ上向きに伸び始めていた。
「な、なんで、こんな」
「ゆういち君くらいの年になれば、こうなれるのよ」
 秋子は袋から指を離すと、ペニスの幹の部分を二本の指でつまんだ。その滑らかな動作は、祐一の不安感を煽ったり鎮めたり、不安定にさせる。任せておいて大丈夫という気持ちと、このままじゃという気持ちが入り乱れるのだ。
 くいくい、と秋子は軽やかなタッチで刺激し、また別の場所に移って同じように指でペニスをわずかに押し込む。みるみる間に、それは秋子の指使いに強い弾力を以て応えるほどに成長していった。
「立派ね」
「あ…」
 祐一は顔を真っ赤にした。自分のペニスが、臆面もなく上を向いてそそり立ち、秋子の前に姿を見せている。自分がこの上無く浅ましく感じられると同時に、妙なドキドキ感も祐一の中に膨らんできた。
 そして秋子はじっくりと鑑賞するように祐一のペニスを眺めてから、さっきよりも強い力でつかんだ。指先でつまむだけではない、しっかりと持って固定しているような感じである。
「ゆういち君、こうしているとどんな気分?」
「な、なんだか、じんじんします」
「こうすると、どう?」
 秋子はペニスの上でしゅるっと指を滑らせた。そして、同じように滑らせて指を元の位置に戻す。しごき立ての一回分だ。
「いいみたいね」
 答えを聞くまでもなかった。秋子が指を動かしている間、祐一はあからさまに腰を引いて、かすれた悲鳴を上げたのだ。もちろん、秋子はそれでもペニスを逃すことなく、一定のペースで指を動かしたが。
「あ…秋子さんっ…!」
「ゆういち君、女の子みたいな声だったわよ」
「そ、それは」
 実際、この年の少年が少女の声に聞こえたとしても全く不思議ではないのだが、祐一は露骨に恥ずかしそうな表情をした。自分でも、意識してしまったらしい。
「じっとしていてね…」
「………!!」
 しゅっしゅっと秋子が速いペースでのしごき立てを開始した。祐一は顔をしかめ、息を荒げながらその行為に必死で耐えていた。秋子の滑らかな指は軽やかに表面を刺激し、しかし決して祐一のペニスを離さない。虜になった、というのが祐一の気分だった。秋子の指と、ペニスを中心としてじわじわと広がってくる、とろけるような感覚からどうしても逃げられないのだ。
「気持ちいいでしょう?」
「……そんな」
 秋子がはっきりとその形容詞を述べた瞬間、祐一はその感覚を快感として捉えざるを得なくなった。そうなると、もうだめだ。安堵感と押し寄せる快感が相まって、祐一を未知の体験へと運んでいく。
「あ…あ、あっ、秋子さん、もうやめてください…」
「いいのよ…そのままで」
「あっ、でも、このままじゃ僕、変になっちゃいますっ!」
 秋子の前では一人称が揺れる祐一だったが、ここで選んだのはより弱い方であった。
 逃げそうになる祐一の両脚を、秋子は腕を回すようにして押さえる。そして、これまでよりもさらに速い上下運動を行った。
「だ、だっ、駄目ですっっ!」
 祐一がべそをかきそうな声を出す。
「あっ!」
 かん高い声が上がった瞬間、びくっとペニスが脈動した。
 ぷちゅっ、とごく少量の透明に近い液体がほとばしる。それは宙を飛んで、秋子の口元の辺りに付着した。
「っはぁ…はぁ…はぁ…ごめん…なさいっ…」
 祐一は呼吸で途切れ途切れになる声のままで、言った。最初に秋子に口答えした時とは比較にならないほど大人しい。
 ぺろり、と秋子は唇の周りを舐めるようにして、出された液体を舌の上に乗せてしまった。そして、こくんと音を立てて飲む。
「き、きたな…」
「大丈夫よ、これはおしっこじゃないから」
「そうなん…ですか…」
 祐一は不安げながらも納得する。
「でも、これがもっとたくさん出て、ミルクみたいに真っ白にならないと、おとなじゃないのよ」
「………」
 祐一はうなだれる。
「それから、今日した事はゆういち君と私の秘密よ?他の人に言っちゃ、だめよ」
 おもむろに秋子は柔らかくなりかけた祐一のペニスをつかんだ。そして、その先端に軽く口づける。
「!!」
 祐一は飛び上がりそうな感覚を覚えた。ペニスもそれを反映したかのように一気に固くなり、直立する。
「ふふ、元気ね…ゆういち君が誰にも言わずにいい子にしていたら、今度はお口でくちゅくちゅってしてあげますからね」
「く、口で…」
 祐一は呆然とした声を上げる。
「それじゃあ、ゆういち君、おやすみなさい」
「おやすみなさい…」
 そう言いながら、祐一は悪いことでもしていたかのように慌ててパジャマのズボンを上げた。慌てすぎて上がらなかったブリーフは、秋子が部屋を出て行ってからこっそり戻しておいた。
 その後、約束が守られたか否かはわからない。ある事件によって、他の記憶と一緒に、秋子との出来事は祐一の心の闇の奥深くに葬られたのだから…
 しかし、それが目覚める日が無いとは限らないだろう。