Daily-EROtic 綾香

12/24
(12/6の続き)
「佐藤先輩…」
「…!?」
 ぐったりと廊下の床に崩れ落ちそうになった雅史の耳に、聞き慣れた声が飛び込んでくる。
「こ、琴音ちゃんっ…」
 恐る恐るに顔を上げた雅史の視界にあったのは、果たして琴音の姿だった。浩之の部屋にいた時と全く変わっていない。一糸纏わぬ肢体も、その足の付け根から確実な勃起を見せている肉棒も…
 そして琴音は一人ではなかった。
「く、来栖川先輩もっ…?」
「姉さん…」
 じゅぷっ…
「あうっ」
 綾香が言いながら腰を引くと、雅史は不意の刺激に小さくうめく。
「こ、これは…どういう…」
 まだ物が挟まっているような秘部の感覚に眉をしかめながらも、雅史は芹香に問うた。リビングからちらっと見たときとは違い、裸の上にマントの状態である。
 ただし、芹香の裸体はごく普通の少女のままだった。幸いと言うべきか、この状況下ではもはやほとんど意味はないと言うべきか。平気で雅史の前に秘部を晒している事を考えると、まともな判断力を失っているという意味で綾香や琴音と同じと言えるかもしれない。
「…………」
「え? あの、もう少し大きな声で…」
「ごめんなさい、だって」
 綾香が通訳した。
「え、えっと、どうしてこうなったのか、どうやったら治るのか、状況を教えて欲しいんですけど…」
 返ってくる答えが怖かったが、雅史は訊く。
「魔力を集めるための実験だったそうです」
 応じたのは琴音だった。
「で、でも、なんでそのために僕が…こんな、身体になんなくちゃ…」
 雅史は言いながら顔が赤くなってくるのを感じる。しかしどうにも身の隠しようはなかった。綾香に突かれていた姿勢のまま、ぽつぽつと言葉を続ける。
「ほんとうは、こうなっちゃうはずじゃなかったらしいんですけれど…」
「…………………」
「琴音ちゃんが、佐藤君にもっと積極的に責めて欲しいから姉さんにお願いして…」
「そ、そういうわけじゃっ!」
 綾香の通訳を琴音が慌てて遮った。
「た、ただ、クリスマスに佐藤先輩と一緒になれたらうれしいなって…でも、みんながいるのにこのお家の中でするのって恥ずかしいですし…パーティに出ているみんなが、ちょっと酔っぱらっちゃったみたいな感じになったらいいなって…」
「きょ、今日は僕の家誰もいなかったのに…」
「え、えっ? そうだったんですか?」
「……うん」
 雅史は全身から力が抜けるような心地になりながら首を縦に振っていた。普通の状態の時に、雅史が自分の家に琴音を呼ぶ勇気があったかどうかはわからないが…初体験も、琴音の部屋だったのだから。
「で、それが魔力を集める実験にもなっていたから、一石二鳥って事だったわけね」
 こく。
 芹香がうなずく。
「ところが、集めなくちゃいけない魔力を大きく設定しすぎて、まだ全然足りてない…そんなとこかしら?」
 こくん。
「綾香さん、鋭いですね」
「伊達に長年妹やってないわよ」
「か…軽く言わないでくださいよ…僕は、どうしたら…」
「もっと佐藤君を気持ちよくさせたらいいんじゃないの?」
「あ、綾香さんっ!?」
 雅史の引きつった叫び。
「ええ、そうらしいです」
 それを軽く流し、琴音は芹香の方を見ながら答えた。
 …すると、ポッと芹香が顔を赤らめる。
「それが術を使った人と一緒になると、もっといいらしいですよ」
「じゃあ姉さんと佐藤君が一緒にイッちゃえば一番いいってこと?」
「正解です」
 琴音は芹香の横から抜け出して、綾香の方に歩いていった。
「ちょ、ちょっとっ…琴音ちゃんっ…! そ、そんなのっ…」
 自分の体の後ろに回り込もうとしている琴音に、雅史は必死に訴えかけた。だが琴音は全く意に介さず、綾香の横に並ぶ。
「綾香さんはさっき楽しんだんですから…私にさせてくださいね」
「琴音ちゃんだって、雅史君の中に入れたんでしょ? しかも初めての時に」
「佐藤先輩と私、恋人なんですよ? それなのに、綾香さん勝手にしちゃって…」
「…そうだけれどね」
「ふ、二人とも、そんな勝手にっ…あっ!」
 後ろを向いていた雅史。その視界の端が、すぅ…とかげった。
「く、来栖川先輩っ…」
 目の前に迫った秘裂から視線を上げていくと、芹香の身体が、そして欲情を映した芹香の瞳が雅史の目を奪う。琴音と同じくらいスレンダーでいて、豊満であるべき所は十分に発達している魅力的な肉体だ。芹香はそのどこをも隠さずに、雅史の目の前を支配していた。焦点のぼやけ気味の瞳は、あふれんばかりの性の欲望をふるふると雅史に訴えかけてきている。
「………」
 芹香が、雅史に聞き取れない何かをつぶやいた。
「いきますよ、佐藤先輩っ…」
 琴音の華奢な手が、がっしりと雅史の腰をつかんだ。
「あ…あっ…」
 雅史に出来た事は、判断停止のかすれた声だけで…
 …ぬちゅぷっ。
 ぐに…
「んんんっ…!!」
 ドロドロになった部分に固い物が侵入してくるのと、雅史の顔に柔らかな恥丘の膨らみが押しつけられたのは同時だった。
 ぬちゅるっ、ぬちゅっ、ぬちゅ…
「んっ…んーっ…」
「佐藤先輩の中、すっごいぬるぬるしてます…」
「んん…んん…」
 雅史はハイペースの琴音の抽送に、快感の曲線をぐんぐんと上げながら声を漏らす。雅史の柔壁は、もう固く熱い侵入物を悦んで受け入れられるようになってしまったようだった。綾香のモノよりは小さいが、小さいなりにあちこちをぐりぐりとこすり立ててくる。琴音の小柄な身体はネコのようにすばしこく動き、雅史の身体を蹂躙していた。
 ぐに…ぐにっ
「んふっ…んんう…」
 芹香はいつまで経っても責めてこない雅史に、腰をより強く押しつけて上下左右に動かす。
「ほらっ、佐藤君…姉さんもイカせてあげないと、何度イッても終わらないわよ」
「んっ…んうーっ…!」
 綾香は雅史の身体の横に回り込んで、胸の微細な乳頭部分を指でふにゅふにゅと転がしてきた。決して強い刺激ではないが、頭の先からつま先まで犯されているかのような感覚がじわーっと雅史を満たしていく。
「んっ…んふぅっ…!」
 ぬちゅ…
「………!」
 興奮が芽生えてきたのか、雅史が舌を芹香の秘裂の間に割り込ませる。芹香は一瞬顔をしかめてから唾をこくりと飲み込んでいた。
 ぬちゅ…ぬちゅ…ちゅく
「………っ………」
 芹香は口を半開きにして、腰を強く押しつけたまま腰をグラインドさせる。雅史はゆっくりと移動する芹香の秘部を追いながら、丁寧に舌で舐め上げていった。自分がさっき自慰をするときに発見してしまった敏感な突起を、集中的に舌の先で転がし続ける。
 じゅぷっ、じゅる…じゅぐじゅぐ
「ん…んんん…」
 雅史はそれを極力慎重な動きにしようとしていたが、琴音の激しいストロークの連続に段々コントロールできなくなってきたようだった。芹香の大切な部分に舌をべったりと当てて、べろべろと動物のように舐める動きになっていく。舌の真ん中に小粒の箇所が引っかかるのを感じながら、琴音の腰使いと同じくらいの勢いで芹香に口唇での奉仕を行う。
「……………!!」
 芹香が目を閉じて天井を仰いだ。
 ちゅぷ…
 雅史の舌の上に、酸味を帯びた液体があふれ出す。生まれて初めて味わうそのエキスを、今の自分も分泌しているはずのそのエキスを、雅史は従順に舐め取っていった。そうすればするほどに芹香の愛液は量を増し、雅史の舌が舐め取れないほどになっていく。
 ちゅる…ちゅく
 綾香の出した液体がそのままだから分からないものの、今の自分もそうなっているのだろうか?
 そう思うと、自分の体がじゅくっと熱い液体をにじませてしまったような気がした。
 じゅぐっ、じゅぐ…じゅぐ
「んふ…んっ、んっ」
 雅史はさらさらの前髪を芹香の下腹部に押しつけながら頭を左右に動かす。もう雅史の快感も爆発に近づいてきたようだ。
「…琴音ちゃん、ストップ!」
「え…?」
 綾香の鋭い声に、感極まったような顔で雅史に覆いかぶさっていた琴音が動きを止める。
「え…何、このロッド?」
「そんな…私、もうすぐだったんですよ…」
「そうしなきゃいけないって姉さんが言うんだったら、しょうがないでしょ。佐藤君の中で一回ずつしてあげたから、おあいこでいいじゃない」
「………」
 ぬぷ…
 琴音が肉棒を雅史の中から引き抜いた。相変わらず顔を芹香の秘部に覆われている雅史は、何が起こっているのかよくわからない。ロッドというのが何を指す単語なのか、雅史は記憶の中を探ったが正解は見あたらなかった。
「でも、私にさせてくださいよ」
「…ま、いいけれど。それより、琴音ちゃん、こうやって…」
「わぁ…なんだか、すっごくエッチですね」
 琴音がそう言い…
 …ぬぢゅぅぅ…
「っ!?」
 雅史の中に、巨大な何かが侵入してくる。
「んーっ! んんっ!」
 綾香のモノよりも、さらに大きくて固かった。そして、入ってきた部分の一番先だけが物凄く熱い。
 ぬぢゅっ、ぬぢゅぅぅ…
「んんー、んんっ! んっ!」
 雅史は悲鳴を上げそうになったが、芹香は雅史の頭を押さえ込んでクンニリングスを止めることを許そうとしなかった。
 ぬぢゅっ、ぬぢゅっ…
「んっ、んっ、んんっ!?」
 観念した雅史がまた舌の動きを再開すると、侵入してきた何かもまた前後の運動を始める。ところが中が裂けてしまいそうに大きいのに、熱い部分が雅史の中をこするとビリビリと痺れるほどの快感が生まれ始めた。
「んっ、んふぅぅ、んんーっ! んっ、んーっ、んーっ!」
 雅史は抗えない官能の連続に衝き動かされ、メチャクチャに舌を動かす。芹香はその雅史の奉仕に、かくんかくんと性交しているように腰を押しつけてきた。雅史の顔を強い圧迫が襲い、息苦しさが生まれる。雅史の顔は少女の欲望を溶かした液体でべとべとになっていた。
 ちゅる…べろっ…べろべろっ…ちゅく
 ぬぢゅっ、ぬぢゅっ、ぬぢゅうぅぅっ!
「んっ、んっ、んうううーっ!!?」
 雅史は芹香の身体にしがみつくようにして、全身を硬直させ…
 ビクンッ、ビクンッ、ビク…ビク、ビクッ!
 芹香と一緒に、少女の肉体を思い切りわななかせて絶頂に達してしまっていた。
 びゅびゅっ、びゅびゅびゅるるっ、びゅびゅ、びゅっびゅるる…
 どこからか自分の体になまあたたかい液体が大量に掛けられるのを感じつつ、雅史はまた意識を暗転させていた…


「うー…頭痛いわ…あんまバカして飲むんやなかったな」
「アタシも…こんなに遅くなっちゃったらDadに怒られちゃうヨ…」

「ふーっ…ビールやチューハイと違って、ワインってきっついのね…松原さんが30分で寝ちゃったのを見たときはまだまだアマイとか思ってたけど…これじゃあたしも人の事言えないわー…」
「ど、どうしよう…こんな時間になっちゃって、お母さんに怒られちゃいます」

「もうこんな時間! 良太達、心配してるだろうな…お酒なんて飲むの初めてだったから、こんなに眠くなっちゃうなんて思わなかったよ…」

「綾香さん、芹香先輩あっちにいましたよ」
「あ、ありがと琴音ちゃん。参ったなー…あのワイン、あんなに強いのだなんて思わなかったから…長瀬さん、目が三角じゃ済まないでしょーねー」

「あ、あれ…浩之ちゃん…?」
「えっ…おっ、おいっ!? あかり、これはどういう事だっ!?」
「ど、どういうって…わ、私も…ひ、浩之ちゃん、これはどういう…」
「俺はやってねーぞ! 知らねーっ!」
「私だってっ…知らないよぉっ…」
「た、確か、今日は12月24日だよな」
「う、うん…」
「俺ん家でパーティだったよな」
「うん…」
 あかりは周りをきょろきょろと見て、自分達が間違いない浩之の部屋にいる事を確認する。
「ワイン飲んで…それで…それで…覚えてないな…そしたら…」
「………そうしたら…それで、浩之ちゃんで…私が…」
 きゅ…
「うわっ! お、お前締めるなっ!」
「ご、ごめんっ…!」
「き、きついんだよっ…力抜けっ…」
 浩之が腰を後ろに引こうとする。
「で、でも…どうやったらいいのか…」
 きゅ、きゅぅ…
「あかり、お前かえって締めてるぞ!」
「ご、ごめんなさいっ!」

 雅史はたどりついた自分の部屋のベッドにがっくりと倒れ伏していた。
「………」
 体力的にはともかく、精神の方は部活で朝から晩までみっちりしごかれた時よりも疲れ果てている。家まで帰ってくる間に何度も転びそうになったほどだ。
 あの後、雅史が気を取り戻すと…藤田家にいる人間は全員気を失っていたのだ。芹香も綾香も琴音も、全員服を脱いだまま廊下に寝転がっていた。その身体はみんな普通の少女の物に戻っており、行為の痕跡を感じさせる体液のような物は綺麗さっぱり消えていた。
 雅史の身体も、ちゃんと元に戻っていた。
 そしてリビングにあった自分の服を身につけると、雅史は家中を回りながら裸で倒れ伏していた皆に服を着せていったのだ。浩之とあかりだけは例外だったが。
 いつ裸の女の子が目を覚ますかと恐怖しながら雅史はその難儀な作業を終え、逃げるようにして藤田家のドアを開けた。
 その時…芹香がちょうど目を覚ました。しどろもどろになる雅史に、芹香は全員記憶が飛んでいるはずだという事を告げた。
 それを聞いて、最低限の安堵を得てから雅史は誰もいない自分の家に帰ってきたのだ。
「はぁ…」
 雅史の前にある目覚まし時計が、24時を指そうとしている。
「メリー…クリスマス…」
 ほとんど自虐的にそうつぶやきながら、雅史はとんでもないクリスマス・イヴの幕を閉じていった…



12/6
(11/10の続きです)
「ん…」
 雅史はうっすらと目を開けた。
「あ…あれ…?」
 ベッドに寝ている感触。タオルケットに裸の身体が柔らかく撫でられる、少し不安を誘う感触。しかも視界に入ってくる天井の紋様は雅史が普段目にしている物と全く違う。妙にクラクラとしている頭の中が混乱で満ちていった。
「ええ…と…」
 雅史は目をこすりながらゆっくりと身体を起こし…
「あっ!」
 そして視界の中に入ってきた自分自身の肢体によって、一気に事態を思い出した。ここは浩之の部屋なのだ。
「………」
 男友達の部屋の中にいて一糸たりとも身につけていない状態というのも恥ずかしい事この上なかったが、やはり最大の問題は雅史の体の変化にあった。脚の付け根になくてはならない男根が失われ、代わりに小学生のような無毛の秘裂がひっそりと佇んでいる。
 悪い夢のように思えて仕方なかったが、夢であってもこれほど趣味の悪い状況になる事は滅多にないだろう。無意識の奥の奥まで探っても、ここまで倒錯した性癖は滅多に出てこないはずだ。
 …逆に言うと、それだけこの雅史の体の異常は現実性を帯びているということになる。
 キィ…
 雅史はベッドのスプリングのかすかな音を立てながら、ゆっくりと立ち上がった。
「琴音ちゃん…?」
 きょろきょろと周囲を見渡してつぶやく。だが、やはり琴音は姿を消していた。
 ただし、琴音がこの部屋にいた痕跡はまだ残っている。雅史の秘裂の中にあるぬるぬるとした感触として…
「…あ…!」
 そこに至って、雅史は自分の服が全て消えている事にやっと気づいた。
(帰れない…)
 雅史は顔を青ざめさせる。服は最悪浩之の物を無断で借りてしまう事もできるかもしれないが、ズボンのポケットに入っていた家のカギはどうしようもない。タイミングの悪いことに、今佐藤家には誰もいないのだ。両親は父親の知り合いの家のパーティに行っているし、姉の千絵美はもう出産を終えて佐藤家から嫁ぎ先に帰っている。
「………」
 雅史は憂鬱を顔中に映す。
 しかしそうしてばかりもいられないと思ったのか、ぎごちない足取りでベッドを降り、浩之の机の上に載っているティッシュボックスに向かって歩いていった…


 とんっ…とん…
 雅史はビクビクしながら階段を下りていく。
 浩之の部屋にいる時は気づかなかったが、1階の方からはどこからともなく妖しげな声が響いてきていた。それも一箇所からではない。少なく見積もっても三箇所、ひょっとしたらもっと多いかもしれない。
 そのどれも、あのパーティに出席していた人間の声だった。雅史が普段知っている彼女たちの声とはあまりに違っていたが、やはり声質自体が変わるわけではないし、誰が声を出しているのくらいかは分かる。
 すすり泣くような、甘えるような、苦しがっているような、悦んでいるような…そんな声だった。琴音のあの様子を見ていれば、何が起こっているか想像することはそう難しくない。そして、その声がいつ自分に近づいてきて、琴音の時と同じ目に遭わされるか分からないのだ。
 かと言って持ち去られた自分の服を取り返さなくては動くことは出来ない。この状況を見た後に、浩之の部屋に入って一晩中怯えている気にはとてもなれなかった。浩之の部屋にはカギもついていないし、この家の中でも誰かがやってくる危険性が高い場所であるように思える。
 もちろんどこが安全なのかはさっぱり分からなかったが…とにかく、雅史は琴音を見つけだして何としても服を返してもらう事だけを考えていた。今は浩之の洋服ダンスから持ってきたトランクスとパジャマを着ている。長身の浩之の服は雅史には少々大きすぎたが、この際贅沢は言っていられない。
 とん…
 雅史はやっと階段を下りきる。そうすると、家中から響いてくる妖艶な声の合唱はますます大きく聞こえてくるようになった。いつどこから正気を失った女の子に飛びかかられるか分かったものではない。雅史はよほど玄関から逃げてしまいたくなったが、12月の末にパジャマだけで一晩を過ごすわけにもいかないだろう。
 ほとんど決死の覚悟を決めて、雅史はそろそろと廊下を歩いていく。
 リビングに通ずるドアの向こうは、沈黙していた。これだけ声が反響しているとどこから聞こえてきているのかもわかりにくいが、少なくともドアを開けた向こうでいきなり…ということはなさそうだ。
 かちゃ…
 雅史はドアのノブをそっと引いて、部屋の中に入っていこうとする。
 ………ぷしゅーっ!!
「わっ!?」
 その瞬間、スプレーか何かを噴射するような音が突然響いてきた。雅史は慌てて顔を引っ込める。
「うっ…げほっ…けほぉっ…!」
 雅史は何回かせき込んでから、目に少し涙を浮かべつつドアの向こうをのぞきこんだ。息は止めている。
 すると、魚をちょっと焦がしてしまったかのような煙がリビングに立ちこめているのが見えた。だが目にはあまり染みなかったし、見ている間にどんどんその煙は薄れていってしまう。まるで霧のようにあっさりとした煙だった。
「…あっ!」
 そして視界がクリアになった瞬間、雅史は再び顔を引っ込めてドアを閉める。
 その向こうには芹香がいたのだ。ちらりと見えただけだから精神状態がどうなのかは判断できなかったが、琴音以外の女の子には少しでも会いたくないと言うのが雅史の気持ちだった。
 雅史はじっと耳をそばだてて芹香の反応をうかがうが、芹香は雅史の事を追ってくるような様子はなかった。ただ家中からの艶声が聞こえてくるばかりである。
「………」
 頭の中では芹香が相談相手になってくれるかもしれないという思考がちらりとかすめたが、雅史は普段の芹香の様子を思ってそれを断念する。普段から要領を得ない人間が非常時に突然テキパキと状況判断してくれるなどとはとても思えなかった。
 雅史はゆっくりと廊下を歩いていく。耳に聞こえてくる妖しい声達は、雅史が足を進めるごとに大きく聞こえるようになってきた。
「………?」
 そしてリビングへのドアから進んできて、洗面所の近くまで来たところで雅史が怪訝そうな顔をする。
「……あ…あれっ…?」
 その視線は洗面所のドアの方に向けられているわけでもなく、廊下の前や後ろに向けられているわけでもなく…雅史自身の身体に向いていた。
「んっ…んんっ…」
 雅史がぐっと唇を結んで、胸の辺りを押さえる。
「……んぅっ…んんっ………んんんっ…!?」
 だがその表情はどんどん弱々しい物になっていった。
 …ぺたんっ。
 雅史はその場で廊下にへたりこんでしまう。女の子座りの状態になってしまった雅史は…顔を真っ赤にしながら、自分の胸と股間を押さえていた。
「あっ…あっ…!」
 切なそうな声を上げながら雅史は目を閉じ、ぷるぷると身体を震わせていた。突然雅史の身を襲った変化は、衝動の高まりだ。どんな衝動か、それはこの家の状態を見れば一目瞭然である。
 何をきっかけとしたのか、それとも眠っていた物が目覚めただけか、雅史もまた家の中にいる少女達と同じような熱い感覚を身体の中にたぎらせ始めてしまったのだ…
「あ…ああっ…うううっ…」
 雅史は手を、特に股間を押さえている方の手を、動かしそうになっては必死にとどめている。雅史が何をしそうになっているのかは明白だった。しかし雅史はそれを廊下の真中で行うという事に激しく羞恥を覚え、理性の限りを尽くして抵抗する。
「ひっ…あっ…んはっ…」
 それは自分との戦いだったが、どうやら雅史にとってあまりに分が悪い戦いであるようだった。雅史はどんどん陥落に向かって攻め立てられていく。
「…あっ! 浩之ちゃんっ…!」
「…え…?」
 そこへ、間近から大きな声が響いてきた。
「あかり…ここすっげー濡れてるぜ…?」
「ひ、浩之ちゃんのが…浩之ちゃんのが欲しいからっ…だから…!」
「だから、オナニーしてたんだな」
「う、うんっ、そう…そうっ…」
 臆面もないあかりの声。
「よし…こっちに尻向けろよ…」
「うんっ…」
 洗面所の中だった。誰もいないように思われた洗面所の中に、実は浩之とあかりがいたようだ。なぜ声すら聞こえてこなかったかは…今の会話を聞けば大体想像がつく。
「うっ…あっ…はぁぁぁんっ…!! ひ、浩之ちゃんのっ…浩之ちゃんのが入ってくるぅっ…!」
「ぐちょぐちょだぞ…あかり」
「だ、だって…浩之ちゃんがっ」
「俺は何にもしてねーぞ。あかりが自分の指で濡れまくったんだろ」
 露骨な会話と…粘膜が絡み合って聞こえる、ぐぢゅっぐぢゅっという大きな水音。パシッパシッという、肌と肌が叩きつけあう音。洗面所のドアが閉まったままでも、そこに展開されている状況はありありと想像できた。
「うっ…うくぅっ…」
 その超近距離からの誘っているかのような行為に、雅史は自らの欲情も燃え上がらせてしまう。寸前まで追いつめられていた雅史は、もはや抵抗できなかった。
 …にちゅっ。
「んぅぅっ!」
 雅史がパジャマとトランクスの中に手を這い入れ、秘裂の中に指を入れる。
 にちゅっ、ぬちゅ…ぬちゅ…
「うっ、ふうっ…あっ…」
 本来ならペニスの根元となっているべき部分、今は性感を凝縮したような固い突起となっている部分を雅史は闇雲にこすり立てた。すでに分泌されていた愛液が絡み、はぜるような高い水音が立つ。たちまちの内に雅史は浩之のトランクスをぐっしょりと濡らしてしまったが、既に雅史はそんな事を気にしていられなかった。ただ、さっきまであかりが浩之に対して披露していたはずの自慰行為を追体験するかのように、ひたすら快感をむさぼり続けるだけである。だぶだぶのパジャマの袖から出した手で、少女の官能を好きなだけ引き出していくだけである。
「…佐藤君!」
「…!!?」
 ぐいっ…
 突然雅史の腰を何者かが後ろからつかんだ。雅史は跳ね上がりそうなほどにビクッと震え上がり、慌ててトランクスの中から手を出して後ろに顔を向ける。
「く…来栖川さん! こ、これはっ…これは違うんですっ…!」
「佐藤君…私も、もうガマンできなくなっているから…一緒に楽しみましょ…」
 雅史の言葉をまるで聞かずに綾香が熱っぽい声で言う。
「あっ…あっ!」
 そして綾香は雅史の体を前にぐぐっと押して、ムリヤリに四つん這いの姿勢にさせてしまった。それに続けて、ずりっとパジャマのズボンをトランクスと一緒に脱がせてしまう。
「佐藤君のココ…こんなに濡れて…」
「うっ…あっ…だ、だめですっ…触らないでくださいっ…!」
 綾香のすらりと長い指が脚の間から見える雅史の恥丘をまさぐる。それに合わせて、くちゅくちゅという水っぽい音がしていく。雅史は濡れているのを見られると言うのがこれほどに恥ずかしい物だと初めて知ったが、濡れている所を触られて感じるのはもっと恥ずかしい事だと同時に思い知らされていた。
「もう、こんなに濡れているんだったら十分よね…」
「…えっ?」
 雅史は綾香の言葉に不思議そうな顔をし…表情を凍り付かせる。
「はじめてじゃ、ないんでしょ…? 佐藤君」
「………く、来栖川さん…」
 雅史に後ろを振り向く勇気はなかった。綾香が着ている物を脱いでいく音を、身体を震わせながら聞いていることしかできなかった。
「…いくわよ」
「や、やめてくださいっ…!?」
 雅史はそう言ったが、ほぼ同時に何か熱くて固い物が太股の辺りに押し当てられるのがわかる。それはすぐに場所を移動して、雅史の割れ目の中にぬるっと侵入してきた。
「い、いやだぁぁっ…!?」
 子供のような叫びを雅史が上げた瞬間、にゅるんという感触と共に体の中へ肉の棒が挿入される。
「くっ…佐藤君の中…きついっ…」
「あっ…あああーっ!」
 雅史は廊下についてしまいそうなほど低く顔を下げ、ぶるぶると身体を震わせていた。綾香のそれは琴音のモノに比べてかなりサイズが大きい。入ってこられるだけで、身体が壊れてしまうのではないかという不安感を覚えるほどだった。
 ぬちゅるっ、にちゅ…ぬちゅっ、にちゅ…
「ああっ…佐藤君の中、締まるっ…」
「く、来栖川さん…もっと…優しく動いてください…!」
 綾香ががくがくと激しく腰を振り、雅史が辛そうな声を上げる。身体の形状だけでなく、行動のパターンや言葉までが逆転してしまったようだった。もっとも、それはほとんど違和感のないほどに二人にフィットしたものだったのだが…
 ぬちゅっ、にちゅ…にちゅうっ…ぐちゅぐちゅっ!
「い、いやああっ…雅史君、すごい…すごすぎるよ…私出ちゃうっ…!」
 綾香が顔をしかめて声をややかすれさせながら叫ぶ。しかし、雅史のヒップに叩きつけるようにしてズパンッ、ズパンッという激しい音を立てている腰の動きは止まっていなかった。
「あ…ああっ…来栖川…さん」
 雅史はか細い声を出して、わなわなと身体を痙攣させる。今まさに洗面所の中でもあかりが体験しているであろうこと、自慰の直後の背後位がどれほどに被虐的な快感を煽るかを雅史は存分に体験させされていた。
「うっ…うっ…あ…あっ…いやああっ!?」
 綾香がどこか悲痛にすら思える叫び声を上げて、雅史の中を思い切り深く突く。
「う…うううーっ…」
 びゅぐっ、びゅぐるっ…びゅっ、びゅっ…びゅぷっ…
 …ビクンッ…ビク、ビク…
「うっ…うあっ…」
 雅史は綾香が濃厚な液体を吐き出すのとほぼ同時に、絶頂に達してしまった。自分の膣が震えて、綾香の肉棒を思い切り締め付けているのが分かる。絶頂に達したというのに新たな刺激が生まれてきて、雅史は全く休まることができなかった。
「う…うう…佐藤君の…すごかった」
 綾香も目に涙を浮かべていた。身体の奥から大量の液体を吐き出すという感覚にまだ慣れていないのだろう。
「はぁっ…」
 雅史はがくりと力つきて廊下の床に顔を伏せてしまった。もう、どうすればいいのか雅史には何もわからなかったのだ。



10/12
「や、やめなさいよっ!? 何考えてんの、あんたたちっ…!!」
 怒りに満ちた叫びが響く。テーブルの上にある、カップに入った紅茶の水面が揺れ動いていた。実際には坂下の声が原因で揺れているわけではないようだが、まるで坂下の怒りが空気を震わせているようにすら見える。それほどの勢いで、坂下は怒っている。
「そう邪険にすることもないでしょ?」
 綾香が坂下の性器をマッサージするかのように軽く撫でた。
「やっ、やめなさいっ…この変態っ」
 坂下は嫌悪の声を上げるが、身体の方は全く動いていない。広いベッドの真ん中に大の字に寝かせられ、筋肉質の裸を晒している。長身なだけに、膨らみに乏しいボディラインが目立っていた。それに加えてまんべんなく日焼けしている事が男性的な体つきを強調していたが、胸と恥丘の膨らみは確実に女のものである。
「昔から、好恵は男嫌いだったわね…まだここは…」
「や、やめっ」
「うん。とっても綺麗よ」
 綾香は鮮紅色の秘部に息がかかるほど顔を近づけ、坂下の無垢な性器を観察する。
「あ、綾香ッ、もうこんなこと、やめなさいよ…」
「大人しくされていた方が身のためだと思うけれど」
 無骨さを感じさせない綾香のすらりとした指が坂下の秘部に入り込んで、ちょんちょんと軽くつつく。
「く…うっ、うっ、うううっ…」
 坂下は強烈な打撃を受けた時のような顔をすると、ぶるっ、ぶるるっと身体を震わせる。
 じわっ…
「あら…これは何かしら? 坂下好恵さん?」
 綾香は染みだした液体を指ですくって、微笑みながら坂下の目の前で見せつける。きらきらと光った指先から、ねっとりした体液が糸を引きそうになっていた。
「さ、さっきの紅茶」
「何のことかしらね」
 しらじらしく言って、綾香は濡れた蜜壷を指一本だけで濃厚に愛撫する。
「うっ…ふくっ…あああああっ…」
 坂下が筋肉を引き締めようとするほど、性感は鋭敏になってますます淫靡な蜜があふれてしまう。粘膜の中は、坂下自身の体液でぬらぬらとした光を帯びつつあった。
「うん…これだけ濡れれば、十分ね」
 綾香はそう言ってのけると、濡れた指先をぺろりと舐める。
「葵、上がってらっしゃい」
「はっ…はいっ…」
 葵のうわずった声が、ベッドの下から響いてきた。
 そこからは、しゅっしゅっと何かをこする音がひっきりなしに聞こえてくる。葵は、ベッドを背に絨毯の上に座り、自分の身体を慰めていたのだ。脚の付け根から生やされた、異形の太い肉棒を自らしごく事によって。
 あちこちを好き勝手に向いた葵のショートカットと、口元からわずかにのぞいている舌の先は葵がこの上なく興奮していることを如実に示していた。身体の周りには、放り投げられた制服や下着が散乱している。
「はっ…、はぁっ…あ、綾香さん…」
「あらあら、葵ったらそんなに大きくしちゃって…」
「も、もう我慢できませんっ…!」
 葵は欲情にたぎった目をぎらぎらと輝かせながら、綾香の身体に這うようにして近づいていった。
「それは良かったわ。葵、好恵の相手をしてあげなさい」
「っ!!」
「うっ…は、はい、わかりました」
 葵は一瞬の躊躇を見せたが、すぐにうなずく。綾香は素早く坂下の前から身体をずらし、代わって葵がそこに動いた。そして、何の断りもなしに坂下の腰をつかんで引き上げた。
「い、いやよっ、葵っ! 目を覚ましなさい…葵っ!」
「も、もう…我慢できません」
 股間から生えた肉棒が、ほどよく濡らされた蜜壷に密着する。十分にトレーニングを積まれた葵の腕は、坂下の身体を軽々と持ち上げていた。
「綾香っ…葵を止めて! この子に何飲ませたの!?」
「好恵に飲ませたのとおんなじような物よ…ちょっとだけ違うけどね」
「な、なんでこんな…きゃああっ!?」
 じゅぶ。
 坂下が普段の低い声とは打って変わった、かん高い悲鳴を上げる。
「あっ、あっ…はああっ…」
 葵が感極まったような声を上げて、腰をぐいと押し込んでいく。犯しているのか犯されているのかわからないような表情を浮かべて、葵は巨大な肉棒を根元までずっぽりと突き刺していた。
「かっ…かはっ…あっ…」
 坂下は短い息を吐き出しながら、わなわなと身体を震わせる。
 じゅぶる、じゅぶっ!
「うあっ…あっ…あっ!」
「ひあぁ…ふぅっ…くふぅ…気持ちいい…です…」
 理性を失った葵の抽送に、坂下は歯を食いしばって耐えようとしていたがすぐに陥落した。反撃のチャンスがある中で相手の打撃に耐えるならともかく、一方的な陵辱、連続したじくじくという痛みは坂下に屈辱しか与えない。
 じゅる、じゅる
 たっぷりとした潤滑液のおかげでだいぶ苦痛は減っているはずなのだが、坂下は初経験の苦痛にすっかり動揺して取り込まれてしまったようだった。
「あ…あ…きゃっ!?」
「ちょっと手伝ってあげるわよ」
 綾香が一本だけ指を用いて参戦すると、坂下がまた黄色い声を上げる。
「い、いや、綾香、もう許して…」
「なんで? こうしていると気持ちいいでしょう?」
「いや…いやよ…」
「頑固ね」
 じゅぶ、じゅぶ。
 葵が力いっぱいの抽送を繰り返すすぐそばで、綾香は秘裂と肉棒によって作られたデルタに指を差し込む。そして鉤状に曲げた指で、丁寧に坂下を愛撫する。
「スキンシップの場を作ってあげるって言ったら、ついてきたのは好恵じゃない」
「こ、こんなやり方なんて、聞いてないわよっ…」
 涙声になりながらも、坂下は反論した。
「葵のことが一番近くに感じられるでしょ? ねぇ葵、好恵を感じてる?」
「は、はい…好恵さんの中、あったかくてきつくて気持ちいいです…」
「ほらね」
「う…うう」
 坂下は涙しながらも、再び綾香がねちねちと敏感な部分を触り始めると沈黙せざるを得なかった。痛がゆいような感覚に飲み込まれて、あられのない喘ぎ声を出してしまわないようにするだけで精一杯だったのだ。
「あ、綾香さん、私もう」
「仕方ないわねぇ…一人でしてる時に気持ちよくなっちゃったんでしょ?」
「は、はい、ごめんなさい…我慢、できなくて…」
「いいわよ。このまましていても好恵イケないだろうから、思いっきりかけてあげなさい」
「なっ…」
 綾香の言葉の最後の、理不尽な命令に坂下が表情を変える。
 ずぶっ!
 びゅぐるぅっ! どぴゅるる…
「あっ、うあ…あ」
 坂下が抗議しようとした時には、葵は肉棒を引き抜いて白濁液のバルブを解放してしまっていた。大量の白い液体が勢い良く宙を飛び、驚愕している坂下の顔に直撃する。
 びゅるっ、びゅる…びゅる
 葵は放心しながらだらしなく前にペニスを突き出し、脈動と共に小さな体をひゅくひゅくと震わせていた。完全に理性を失った淫らな葵の顔も、少女としてありえない放出の前では、恥じらいに頬を赤らめているように見えないこともない。
「く、く…うっ」
 黒い短髪から下腹部までの大量の白濁液。それが、二回の敗北を味わった者を示すレッテルだった。そのレッテリングを行ったのは、勝利をもぎ取った人間に他ならない。
 坂下はがくんと頭を折りながらも、屈辱に身を甘んじるしかなかった。



10/10
 ぱたん。
「ここって…」
「姉さんのとこの部室よ」
 綾香が雅史に向き直る。着ているのはいつも通りの寺女の制服だ。
「……」
 雅史がドアの方を振り向くと、後ろ手で戸を閉めた芹香がこくりとうなずいた。
「そう…なんですか」
 部屋は薄暗かった。学校の中だというのに、証明は燭台に灯(とも)されたロウソクだけだ。入り口のドアも、ただの学校の引き戸とは思えないほどにぴったりと閉まって廊下からの光を遮断している。何か細工をしてあるのかもしれない。
 ぱたっ、ぱたっ…
「あの…」
 小さく声を出す雅史に、前後から二人が近づいてくる。上履きが木の床を叩く乾いた音が、妙に雅史の不安感を煽った。
「そ、それで、僕に何の用事なんですか? 浩之のことですか?」
 雅史は問う。
 本来なら、もっと前にしておくべき質問だったのかもしれない。しかし、浩之を通じて多少知っているといった程度の関係の芹香と綾香に校庭で話しかけられてしまった時、雅史はすっかり面食らってしまっていた。しかも、他校の制服を着ている綾香が雅史の制止も聞かずに校舎の中に入っていって閉まった。堂々と校内を歩き回ろうとする綾香を放っておくこともできず、雅史は二人が歩くままについてきてしまったのだ。
 だから、人目につく事を恐れて、廊下を歩く間は何も会話をしていない。
「そうねぇ…」
 綾香が、口元に楽しそうな笑いを浮かべていった。思わず雅史が芹香の方を振り向くと、こちらは全くの無表情だ。どちらの表情も、この状況では雅史の不安を煽ることしかしない。
「え、えっと」
 雅史は綾香の方に一歩後ずさり、それからまた芹香の方に一歩踏み出した。動くことが出来ない。何とも言えないプレッシャーが雅史の動きを押さえつけてくる。
 すたっ…
「!?」
 軽やかなステップの音がしたかと思うと、雅史の背中が強く抱きすくめられる。
「え、えっ…!」
 雅史がびくっと顔を後ろに向けると、綾香の顔が眼前に迫って雅史の顔をのぞきこんでいた。つり目がちな綾香の瞳が、誘惑の色を帯びて光っている。
 慌てて綾香から顔をそらし、視線を前に向けると芹香は懐から何かを取りだそうとしていた。
「こ、これは…」
 雅史の頬を、汗がつたう。
 その雅史の細いあごを、ぱし、と綾香の手がつかんだ。そのまま、ゆっくりと綾香の方を向かせる。
「しばらくの間、私たちに付き合ってもらえるかしら?」
「つ、つきあうって、何をするんですか…?」
 あごを支える手の力はあくまで弱いものだったが、雅史は綾香の吸い込むような視線に顔を動かせなくなってしまう。既に少し震え始めた声で、問い返すのがやっとだった。
「い・い・こ・と」
 明らかに作り声とわかる言葉でも、綾香の大人びたトーンが耳元でささやかれると雅史の緊張は一気に高まってしまう。それに加えて、綾香の手が雅史のYシャツのボタンの辺りに絡んできた。
 ぷつっ…
「あっ」
 最初から外されていた第一ボタンを素通りし、二番目のボタンが外される。下からランニングのシャツがのぞく。
 きゅぽ…
 その時何かを引っこ抜くような音がした。見ると、芹香の手に透明な色をした液体の入った小瓶がある。今のは、その栓を抜く音だったようだ。
「な、なんでこんなことを」
 ぷつっ。
 三番目のボタンも外される。芹香が小瓶を持って、綾香の方に近づいていく。どんどん進展していく状況に、雅史も落ち着いてはいられなくなってきた。
「ん」
 ちゃぽちゃぽ…
 綾香が口を開け、芹香がそこに小瓶の中身を注ぎ込む。量はそれほど多くない。栄養ドリンクの瓶の半分もないかもしれない。だが、綾香はそれが口の中に注ぎ込まれても飲み込もうとはしていないようだった。口の中に、注ぎ込まれた液体を溜め込んでいるように見える。
 一体どうすればいいのかわからず、雅史は途方に暮れていた。しかし、その途方に暮れる時間すら長くは続かない。綾香の手が再度雅史のあごに掛かり、綾香の方を向かせる。
 雅史はそれに大人しく従ったが、綾香の指が雅史の唇に触れると驚きの表情を深めた。
 くちゅっ…
「!!」
 そして、綾香の唇が自分の半開きになった口に押しつけられると、声にならない言葉が漏れる。反射的に顔をそらしそうになったが、綾香に背中を押さえられているために逃げ切れなかった。覆いかぶさるような口づけが雅史の薄桃の唇を襲う。
 ちゅる…ちゅるっ
「ふんっ…んんーっ!」
 生まれて初めてのキッスに、雅史は目を白黒させるしかなかった。しかも、口に含んだ液体を綾香がどんどん送り込んでくる。アルコールのような匂いのする液体が、雅史の口腔の中を満たしていく。
 ちゅるん…れろっ…れろっ…
 すっかり液体を雅史の中に流し込んでしまうと、綾香は舌を差し込んで雅史の舌をくすぐった。完全に未知の感覚に、抵抗力のない雅史は耐えきれず筋肉を弛緩させてしまう。倒れ込みそうになる雅史を、芹香が前から支えた。前後から少女の柔い肉体に挟まれた雅史は、それ以上に弱々しい表情を浮かべて綾香のキッスに身を委ねてしまっていた。
 こく…こくん
 初めは液体を飲み込むことを拒んでいた雅史も、やがて綾香の唾液と混ざったそれを少しずつ嚥下していく。既に潤み始めていた雅史の目が、じわっと揺れた。それでも綾香は雅史の胸をまさぐるような動きを加えながら情熱的に雅史の唇をついばみ続ける。
 芹香も、ただ雅史の体を支えているだけではなかった。積極的な動きこそしないものの、さりげなく内股に回した手で微妙なところを撫でる。薄い学生ズボンの生地を通して、細長い芹香の指が楽器を奏でるように雅史を触った。それに加えて、下腹部をゆるゆると雅史に押しつける。あまり身長の高くない雅史は、芹香とも綾香とも身長差が少ない。芹香の敏感な部分は、そのまま雅史の敏感な部分に密着した。
「………」
 芹香は、既に雅史の股間の固いものを感じている。この状況下で、健康な少年が勃起しないわけがない。しかし、初(うぶ)な雅史にとっては縮み上がるほど恥ずかしい経験だった。
 そうする内に、雅史は全身が熱くなってくるのを感じる。顔とペニスだけではない。ちょっとした料理屋に行った時に飲まされたワインのように、喉から熱さが広がって、それがとどめようもないほどに広がっていった。アルコールの比ではない、すさまじいスピードで全身に熱さが広がっていく。頭のてっぺんから指の先まで、熱っぽい血流が巡っているような気分だった。
 ちゅぷんっ。
「ふむんっ…はぁ…もういいかしらね」
「…はあぁぁ…はあぁっ…」
 綾香がようやく雅史の唇を解放すると、雅史は震えた声で泣いているような息をしながら呼吸を整え始めた。単に呼吸が苦しかったとか、興奮したとかいうだけでは済まない。明らかに体が変調を起こしていた。
 その中でも一番おかしくなっているのが…自分の先輩のスカートに押しつけてしまっている、固い肉棒だ。もちろん、雅史も勃起するのが初めてということはない。だが、これほどまでに熱く大きく固くなった状態が継続するというのは経験したことがなかった。何か熱い心棒でも通されたように肉棒が勃起しっぱなしになって、抑えようがないのだ。
「姉さん、どいて」
 こく。
 綾香が言うと、芹香が雅史から少しずつ体を離していった。綾香は雅史の体を両手でしっかりと抱え込んで、崩れ落ちそうになる雅史を支える。
「あら? 佐藤君、これは何かしら?」
 また耳元に口を近づけて、綾香が言う。学生ズボンを激しく突き上げている隆起を指摘されているのは明らかだ。
「ううっ!」
 それを強調するかのように、身を離した芹香が指先だけを雅史の股間に近づけて頂点の部分をなぞった。雅史の体に、電流にも近い快感が走る。
「姉さんの指、どんな気分?」
「や、やめてくださいっ…そこは…」
 芹香の愛撫は地面に絵でも描いているような単調で軽いタッチのものだったが、雅史は弛緩しきった体を必死に動かそうとして悶える。間接的な刺激なのに、恐ろしいほどの快感が生まれていた。
「気持ちいいでしょ?」
「い、いやっ、そんなっ…だ、だめですっ! 来栖川先輩っ、やめてください! も、もう…!!」
「えっ」
 綾香が意外そうな顔をした瞬間、雅史は弛緩していたはずの体を激しく痙攣させた。
 びゅくん、びゅくん、びゅくん…!
「うっ…あ…ああっ…」
 雅史がうなだれて、屈辱にまみれたうめき声を上げる。そして、一定の間隔で体を震わせる。
 芹香も多少の驚きの表情を見せていた。止まった指の先には、確かな肉棒の振動と、何かが叩きつけられるような感触が感じられる。そして、さっきまでと比べて、明らかに温かくなっている。
「ひっ…や、やめて…くだ…」
 芹香が確かめるように指をぐいぐいと押し込むと、ズボン越しにもぬるんとした感触が返ってきた。雅史はようやく絶頂が収まり始めたばかりの所に敏感な部分を刺激され、悲痛な声を漏らす。
「佐藤君、早すぎるわよ? いつもちゃんと自分でしてる?」
「そ、そんな、こと」
「ふふふ…ちゃんと自分でもできるようにお勉強しなくちゃね。それから、学校でお漏らししちゃったお仕置き…」
「え、えっ」
 綾香は、雅史を支えていた手をするっと引き抜く。
「あっ…」
 既に全身の力を失っていた雅史は、膝からがくっと床に倒れ込んだ。そのまま、仰向けになって床に転がってしまう。
 そこに、芹香と綾香は獲物を捕らえる肉食獣のように飛びついた。芹香が上半身、綾香が上半身。
「………」
 抵抗できない雅史は、自分の服が剥かれていくのをただ見ているだけしかできなかった。きちんとズボンの中に入れていたYシャツの裾が芹香の手で引っぱり出され、ボタンが全部外される。綾香が、黒いベルトを機械でも扱うように事務的かつ効果的な手つきで外す。そして学生ズボンのホックとジッパーを素早く取ると、一気にぐいっと膝の辺りまで脱がせてしまう。
「こんなに出したんだ」
 白い綿のランニングとブリーフの雅史。そのブリーフはべっとりと濡れて、隙間から半透明の白濁液がこぼれてきていた。雅史はついに目を閉じてしまう。まぶたから、涙の雫があふれた。
 綾香は雅史の体の左に回り込み、右に位置している芹香と一緒に雅史のランニングをつかむ。そして、子供にするような手つきでずるずるとランニングを脱がしていく。
「よっ」
 最後に雅史の髪をばさっと揺らしながら、二人は雅史のランニングを完全にはぎ取ってしまった。髪の毛が乱れた雅史は、ますます憔悴したように見える。それなりに筋肉はついているが、どこか華奢なイメージを隠しきれない肉体が露わになっていた。
 残っているのは汚れたブリーフだけという、惨めな格好を二人の少女の前に晒している。雅史は何も考えないようにしたが、涙ぐんでしまうのを止めることはできなかった。
 ちゅく。
「!?」
 だが、突然胸に濡れた感覚が走ると雅史は再び体を跳ね上げそうになる。
 ちゅく…ちゅくっ。
「んっ…んん」
 両方の胸の、ごく小さな突起のある部分が舐められている。綾香と芹香、それぞれが舌を出して雅史の乳頭をくすぐっているのだ。じらしの全くない、突起の部分だけを執拗に舐める動きである。初めはくすぐったさが先に立ったが、じきに背を這い上がるような快感が生まれてきてしまった。決して小さくないが、どこか間接的な刺激が雅史の体を再び熱くしていく。
「はぁ、はぁ、はぁっ…」
 そんな所を刺激されるとは思っていなかった雅史も、すぐに呼吸を熱くしてしまった。肉棒を触られていたときよりもずっと被制圧感の強い愛撫に、雅史は無意識のうちに虜になってしまったようだった。
「佐藤君、男の子もここ感じるの知らなかったでしょ?」
「………」
 雅史は少し顔を芹香寄りに向けながら、無言だった。
「でも、一番好きなのはやっぱりこっちね」
 綾香が言うと、雅史はまた体を震え上がらせてしまう。そして、雅史にとってはかなりの長い沈黙を挟んだ後、ブリーフをつかまれたのが感じられた。
 芹香と綾香は、ランニングの時と全く同じようにブリーフをつかみ、ゆっくりと下ろしていく。べっとりとしたブリーフが下ろされて、粘液のついた肉棒が外気に晒されるのがわかった。さっき放出したばかりなのにもう固さを取り戻している肉棒を屹立させながら、雅史はブリーフが下ろされ、途中でズボンと合流し、最後に上履きと一緒に脱がされるのを固唾を飲んで待つ。
 ぱさっ…ぱたっ。
 そして、雅史は靴下しか身につけていない状態にされた。
「ふぅん…早いけれど…結構大きいのね」
 にちゃっ。
「くぅ…」
 指が肉棒に絡むと、さきほどの愛撫を彷彿とさせる快感がびしっと雅史を突き抜けた。
「姉さん、来て」
 目を閉じている雅史には、無言で行動する芹香が何をしようとしているのかはさっぱりわからない。ただ、次の刺激がどこに生まれるのかだけは明白だった。そう思うだけで、その部分が異様に敏感になってきてしまう。
 ぺろん…
「あっ…うあっ!」
 ぺろ…つぅぅっ…
 次の瞬間、雅史は大声を上げていた。
 舌だ。綾香と芹香が、両脇から同時に雅史の肉棒に舌を這わせたのだ。放出された白濁液を舐め取るように、二人で半分ずつを丁寧に舐め上げる。
 ちゅるん。
「ふぅ…どう? 気持ちいいでしょ?」
 雅史はぴくぴくと体を震わせることしかできなかった。液体を舐め取るためだけの目的だったのか、それほど長い時間の舌戯ではなかったが、雅史にショックと背徳感を与えるには十分すぎる行為だ。
「じゃ、今度は私たちの番ね」
「…?」
 雅史は意味を取りかねたが、いきなり肉棒の先にぬめついたひだひだの感触が感じられると、さすがに狼狽する。雅史は、芹香も綾香もまだ服を着ていると思っていたのだ。だが、突然生まれた指でも口でもない特殊な感触は、綾香の秘めた部分なのだと本能的に雅史に伝える。
「あ、あ」
 …じゅるんっ!
「あああああっ!?」
 一瞬にして、雅史は童貞を失っていた。
 じゅぷ、じゅぷ…
「うんっ…はぁ、なかなか…いいわよ…こんな可愛い顔した男の子を私の物にしたって聞いたら…怒る子、きっと多いんでしょうね…」
 肉棒全体が、ジューシィな感触の柔らかい媚肉に包まれている。そこが生き物のようにうごめき、上下に動いて雅史の肉棒をしごくように刺激する。
 初経験のぬめった膣内と、綾香のきつい締め付け。雅史は目がくらむような快感を感じながら、うっすらと目を開けようとした。
「…!?」
 目の前が真っ暗になっていた。そう思ったが、違う。
 ぬちゅ…
「う…ううんっ…うっ」
 雅史の口は、何か温かなもので覆われていた。そして口腔の中に、酸っぱい液体が流れ込んでくる。酸味に交じって、ふんわりとした甘めの香りも交じっていた。秘部の味と香りなのだと、雅史は再び本能的に理解していた。
 じゅぷ、じゅぷ…
「ふぅ…んん」
 雅史の肉棒は、未だ綾香の膣内でねんごろな摩擦を受けている。つまり、今雅史の口に押しつけられているのは芹香の性器ということになる。
 ぺろ。ぺろ…
 全身の興奮と淫乱な少女達の空気に飲まれ、雅史は舌を動かしていた。何もわからないが、とにかく舌を上下左右に動かす。口の中に流れ込んできた酸っぱい液体は、舐め取って飲み込む。
 ぺろ、ぺろ。
 雅史は同じ箇所をただ舐め続けた。そうすると、芹香は自ら腰を動かして望む位置に雅史の舌を誘導する。
 ぺろ、ぺろ…
 舌の先に、固い粒が引っかかるようになった。雅史は同じ舌の動きを続ける。芹香は腰の位置を微調整して、雅史の舌の先がぴったりと粒に当たるようにした。
「姉さん、佐藤君の舌、どう…?」
 雅史には、芹香が綾香にどう反応を返したのかわからない。ただ、口の中に流れ込む液体の量がそれとわかるほどに多くなってきているし、芹香の腰が時折震えるようになってきたのもわかった。雅史は忠実に同じ位置で舌を動かし続ける。
「う、うん…私も…すごく、いい…」
 綾香の声が、随分と切羽詰まったものになってきていた。しかし腰を振る動きはますます激しくなってきている。雅史の肉棒は、早くも二回目の放出に近づきつつあった。
「さ、佐藤君も動きなさいっ! こ、腰を上げて…そ、そうっ!」
 雅史は綾香の命令に従い、あるだけの力で腰を跳ね上げる。綾香はそれに合わせて、全体重を叩き落とすように腰を下ろした。強い衝撃に、綾香の中がぎゅううっと強烈に締まる。
 芹香も官能を高めているようだった。腰のグラインドを強めて、雅史の舌の位置よりも強く突起を雅史の舌に押しつけることを重視した動きになっている。痙攣も、より頻繁に起こるようになってきたようだった。
「うっ…イ、イク…」
 綾香が絶句して、雅史の肉棒を搾り取るように膣が収縮する。
 ビクッ…ビク、ビク、ビクっ…!
 びゅ…びゅくっ、びゅくん、びゅく…
 完全に絶頂は合一し、雅史は極みを迎えた綾香の膣内に激しく放出した。
 同時に、芹香の腰もぶるぶると震えて雅史の顔にありたけの力で押しつけられる。芹香も、雅史の舌だけで絶頂してしまったようだ。
「は…はぁっ…サイコー…」
 綾香がそう言い放った。
「姉さん…ん…んんっ」
 そして、二人の姉妹は雅史の上にまたがりながら口づけを始める。
 雅史は二度目の絶頂に放心しながら、一週間ばかり学校を休んでいる浩之がどうしたのかをぼんやりと考えていた。



9/28
 ある朝。綾香の股間に違和感があった。
「…ね・え・さ・ん?」
 ぎぎっ…と首を動かして、綾香はベッドの脇にちょこんと座っている芹香に目をやる。
 いつ部屋に入ってきていたのかはわからないが、朝から帽子にマントの魔術師ルックでは「私が犯人です」と言っているようなものだ。綾香は頭痛に頭を抱えながら、芹香の顔と不自然に膨らんでいる自分の股間を交互に見やる。起き抜けの眠気を綺麗に吹き飛ばすような状況だった。
「…………」
 綾香が布団をめくって自分の状態を見せると、芹香はゆるりとした動作で立ち上がる。どちらが起き抜けなのか分からないほどの緩慢な動きだった。
「…いくらなんでも、これはないんじゃない?」
 罪悪感が無さそうな芹香に、綾香は苦々しく言う。同意・非同意に拘わらず散々芹香の魔法に付き合わされてきたが、今回のパターンはこれまでで最悪なのは間違いなかった。
「お願いだから、説明してくれる…?」
 こくん。
 芹香は綾香の膨らんだ所を見つめて、少しだけ頬を染めながらうなずいた。
「姉さんがやったんでしょ…姉さんに恥ずかしがられちゃ、世話ないわよ」
 こく。
「…まぁいいわ…出来れば早く説明してもらって、元に戻してほしいんだけど…」
 非難されているのに素直にうなずく芹香に、綾香は呆れ顔だった。
「いっとくけど、もう元に戻せないってのはナシよ?前の時は本気で死のうかって思ったくらいなんだから…」
 ふるふる。
 芹香は首を横に振る。
「そう…じゃあなんでこうなったのかをきっちり説明してね」
 こくん。
「いちいちうなずかなくてもいいから…」
 こく…
 半分だけうなずいて、芹香はまた顔を赤くした。
 綾香はよっぽど何か言ってやろうかと思ったが、また遅くなりそうなので我慢する。
「……………………」
「魔力ぅ?私に?」
 こく…
 芹香はまた半分だけうなずいて、またもや顔を赤くする。
「いいから。姉さんがうなずこうがうなずかなかろうが…それで、これとどういう関係があるの?」
「………………」
「はい…?」
「……………」
「なんで…よりにもよってそんな方法を使うのよ…」
「…………」
「ひどい話ね…」
 綾香はごんごんと自分の頭を叩いて、疲れきった顔をする。
「いやよ…いくら姉さんだからって勝手にこんなのされて、付き合う義理なんてないもの」
 芹香からそっぽを向いて、綾香は腕組みした。
「早く消して、こんなの」
「…………」
「…あのね」
「……………」
「姉さん、嘘ついてない?」
 ふるふる…
「ほんとーに?」
 こくん。
「……………ああああああああああっ」
 綾香は芹香の目をじぃっと見ていたが、芹香のぽーっとした瞳が何も語ろうとしないのを見て諦めたようだった。
「…私が彼氏できないのって、姉さんの影響がすごくありそうな気がするんだけど、気のせい?」
 こくん。
「……あああっ!もう、わかったわよっ…どーとでもして」
 腕組みをしたまま、綾香は言い切る。
 そう言うと同時に、芹香はベッドに上がってきた。まだ綾香が寝ていたあたたかさの残る敷き布団の上をすりすりと動いて、綾香の真正面にちょこんと正座する。
「…もう…」
 綾香は腕組みの姿勢を崩さないまま、芹香の事を見ていた。もちろん非難の色濃くにじみ出た視線だったが、芹香は何事もないかのように身を乗り出して、綾香の膝の上に手を乗せる。
 帽子のつばをぶつけそうにしながら、芹香は綾香のブルーのパジャマに指をかけた。そして、まるで自分の服を脱いでいるときのような普通の動作でパジャマとショーツを一緒に下ろしていく。
 ぷるっ…
「うわ…」
 芹香の帽子で視界は遮られていたが、肉棒がショーツの中から飛び出した感触はわかった。押さえ込むものがなくなった肉棒は、勢い良く屹立して外気に晒される。
「く、くすぐった…」
 既に、芹香のかすかな息が肉棒にかかり始めていた。綾香は思わず緊張してしまう。さっさと済ませてくれとは言ったものの、実際にされるとなると妙な不安感が生まれてきた。
 はぁ…はぁっ…
 芹香の息が近づいては離れる。そして、帽子のつばがお腹の辺りに何度も押しつけられた。
「な、なにしてんの…姉さん、帽子取ればいいでしょ」
 声がうわずってしまったのは、まるで焦らされているような気がしてしまったからだ。綾香は芹香の帽子のつばをつかんで、すぽっと外す。
 その瞬間、舌をぺろっと出した芹香の顔が自分の股間から生えた肉棒に迫っているのが視界に入ってきた。そして二人の目が合う。
「や、やだ…早くしてよ」
 透明な目で見られていると、ますます不安になってきた。綾香は帽子を脇に投げて、また腕組みの姿勢に戻る。
 はむっ。
「あうっ!?」
 ぺろぺろ…ちゅぽっ
 帽子を投げたのとほぼ同時に、芹香がぱっくりと綾香の肉棒をくわえこんでいた。そして、すぐに舌が先っぽの部分をこねくり回し始める。
「つ、つよすぎよ…姉さん」
 綾香は体験したことのない激しい快感に、動揺していた。そもそも、綾香は性感についてまるっきりの純潔だ。「感じる」というのがどういう事なのか、知識の上でしか知らない。
 ぺろぺろっ。ぺろ…
「い、いやあっ…こんなの…こんなの…」
 くちゅくちゅくちゅ。ちゅぽっ…ちゅぽっ…ちゅぽっ…
 そんな綾香にとって、敏感な肉棒に加えられる口唇の刺激は強烈すぎた。しかし快感は快感だ。綾香が感じているのは痛みでもくすぐったさでもなく、激烈な快感だ。
 だが、芹香は口を黙々と動かし続けていた。段々としごき立てる動きが中心となってきたが、時折舌が先端をめちゃくちゃにこねくり回す動きも混じる。綾香は腕組みは崩していなかったが、芹香が先端を舐める度にびくっとベッドから身体を浮き上がらせていた。目はいつのまにか閉じられ、顔は芹香とはややずれた方向を向いていた。表情は何かに耐えているようなものになっている。
「い、いつまで続けるのよぉ…これ」
 ちゅぼちゅぼっ…
 綾香がそう言うと、芹香は口の動きをさらに激しくした。綾香は電撃を受けたように身体を震わせる。
「くぅぅっ…!…もうやめて…姉さん…変になる…」
 ついに綾香は腕組みを崩して、芹香の頭を両手で押さえつけた。しかし綾香が露骨な反応を示すほどに芹香は舌と口の動きを活発にして、綾香の肉棒をどんどん追いつめていく。
 無論、芹香は綾香の感じているのが射精感だと気づいていた。綾香がそれに気づいていないだけだ。少女が体験するはずもない感覚なのだからある意味では当然とも言えるが、綾香が状況を理性で判断をする余裕をなくしている証拠とも言える。
「ゆっ…許して…本当に…頭の中と…これがっ…お…おち○ちんがっ…壊れるぅっ」
 綾香は、肉棒をそう形容するしかなかった。他に言いようがなかったのだ。綾香は外国に長くいたとは言え、英語で婉曲(えんきょく)に述べているだけの時間も理性も失っていた。
 芹香はそれを聞き、綾香がいよいよ我慢しきれなくなった事を悟る。飛び出してくる液体に備えるべく、芹香は口の中いっぱいに綾香の肉棒をくわえこんだ。さらに、綾香の女性器の部分も優しくさすって綾香の絶頂をうながす。
「い、い、いやぁぁ!いや…姉さん、どいてぇぇッ!?」
 どんっ!
「!」
 綾香は芹香の頭を跳ね飛ばそうとする。
「いや!だめぇ!…あああああーっ!?」
 びゅるっ…びゅぴゅるっ…びゅるるぅっ…!!
 それとほぼ同時に綾香は耐えきれなくなって絶頂し、肉棒が射精を開始した。
「うあっ、うあっ、うあっ…うああっ…うあっ…」
 綾香はひとつの放出ごとに、情けない声を出してジャンプするように腰を跳ね上げる。芹香は頭を突き飛ばされ、くわえる位置が根元から先端近くまで移動していたが、何とか濃厚な白濁液を口の中に受け止めようと試みた。
 びゅる。びゅる…びゅ
 身体を跳ねさせる綾香の動きに合わせて芹香は必死に肉棒を追う。
「くっ…くぅぅっ…うあああああっ…」
 が、綾香の射精が止まるまでには顔や髪のあちこちに白い液体がこびりついてしまっていた。特に額から右の目辺りにかけては、たっぷりと白濁液がついて垂れてきている。一回だけ、綾香が完全に虚空に放出するのを許してしまったのだ。
「………」
 ばたっ。
 大の字に伸びてしまった綾香を後目に、芹香はぺろぺろと顔についた白濁液をぬぐい取って舐め始めた。
 ちゅるちゅるっ…ぺろん。
 確かにこれは精液ではなくて魔力を媒介する大切な液体ということにはなるが、無表情な芹香が美味しそうに顔中に付着した白濁の液体をこそげとって舐めているのは非常に淫靡な光景だ。
 ちゅるん。
 そして一通り舐めてしまったところで、芹香が困った表情になる。
「…………」
「え…?」
 放心状態の綾香が、寝転がったまま返事する。
「……………」
「す、すこし足りないって…そ、そんなっ…もう…だめっ…私…!」
 はむっ。
「いやああっ!姉さんっ…もう許してぇっ…」
 ちゅうちゅう。
 芹香は幾分小さくなった綾香の肉棒を片手でしごきながら、出てきた白濁の液体をいとおしそうに吸い取っていた…



9/1
 …ぎゅ。
「………」
「どうだ?」
「別に」
「ふぅん…」
 浩之は密着していた綾香の背中から身体を離す。
 ぴったりと触れていた肌と肌。二人ともそれなりに筋肉質ではあるが、ほとんど半裸の状態で異性が触れあっていれば一定のニュアンスを醸し出さずにいられない。ただ、綾香の瞳がタオルで覆い隠された事で、二人の間にはより沈黙した空気が入り込んだようだった。
 かさかさ、と浩之がシーツの上を移動する音が部屋の中に響く。綾香は脚を伸ばして座った状態だ。少しだけ脚を開かされれば、ヘアだけでなく性器の様子も露わになってしまうだろう。しかし綾香は身じろぎもせずにいた。
 するっ…
 浩之が軽く綾香のすねを撫でる。
 極めて微妙なそのタッチにも、綾香は何も反応しなかった。
 …ごそ。ごそっ…
 そして、しばしの間が空いてからまた別の音が聞こえてくる。ベッドの下に置いてあるバッグを探る音だ。やがて、がちゃがちゃという音がして浩之が何かを取り出す。
「………」
 気配で浩之がまた身体に近づいてくるのは感じられたが、綾香はやはり無反応だった。
 ……カチ。
 ぶぅぅぅ…ん
「ぇ……」
 振動音に隠れるような微かな声が漏れる。
 ぶぅん…ぶぅううん…
 存在を強調するかのように振動音が高く、低くなる。同時に浩之は無造作に綾香の脚の上へと乗っていった。
「………」
 ごく薄くではあったが、綾香の頬に汗が生まれる。
「やっぱビビってるか?」
「…別に?」
 やや語尾が上がっていた。
 ぶううぅん…
 ひときわ振動音が大きくなったかと思うと、おもむろに綾香の腹部に強いバイブレーションが走った。
「………!」
 綾香は呼吸すら押さえ込んで反応を抑えているようだ。横隔膜に直接響いてくるような振動。そして、今にも敏感な部分に動かされてきそうな振動。
 身体を弛緩させてリラックスすることもできず、綾香はぎゅぅっと脚を強く閉じることに意識を集中させていた。痛くなるほどに筋肉を収縮させ、タオルの下に隠れた目を思い切りつむる。
 ヴ…
 その筋肉をほぐそうとするかのように、浩之はバイブの先端を下の方へスライドさせていった。
 ヴヴッ…ヴ…ヴヴ…
 脚の真ん中のデルタゾーンに滑り込ませたバイブを、強引に脚の間に突っ込んでいく。突然強烈になった刺激に綾香は思わず脚の締め付けを強くしていたが、それによって性感帯の延長線上とも言える太股にますます強い刺激が走っていった。
「っ…っっ…っ」
 ついに綾香がくたりと力を抜いて、侵入に身を委せる。
 ヴヴヴ。
 途端に、クレヴァスの上にぐいと押しつけられたバイブが加減も容赦もない振動を与えていった。間接的にクレヴァスの中のクリトリスはたっぷりと刺激を与えられ、綾香の性感に火をつけていく。
 その状態が、なぶるようにずっと維持された。時折ぐりぐりと回転させてクレヴァスの中に押し込むような力が加えられるが、決して粘膜の中に直接の刺激が与えられることはない。だが、その度に走る不安感と焦燥感が綾香の理性を徐々に突き崩し、刺激と性感の間に築かれた抵抗を少しずつ取り払っていく。
「はぁっ…あ…うっ」
 わずかに開いた唇から、苦しげな息が漏れてくる。滅多な事では取り乱さない綾香だが、閉ざされた視界によって不安と焦燥を倍増させられているのは間違いなかった。周囲の状況を把握できなければ、対処の仕方をあれこれと考えて意識をそらす事もできないのだ。
 いつしか、綾香は透明で熱い液体をクレヴァスの中にあふれさせてしまっていた。どこで崩れ落ちてしまったのかは分からないが、気づいたときには止めようもないほどに液体の量は増えて、クレヴァスから外にあふれ出さないように身を縮めることしか出来なくなる。
「なんか、賭けにもなってないな」
「う…うるさいわよ」
「もう終わりにするか」
 じゅぷるっ。
「んんっ!」
 バイブがクレヴァスを割った瞬間、ぬめった水音が響く。と同時に、綾香のクリトリスは直接バイブの振動に晒された。
「んっ!んっ!んっ!ひ、浩之ぃっ!」
 綾香がうわずった声を上げ、身体を引きつらせる。
 ぬぷ…。
 次の瞬間、クリトリスをこするように動かされたバイブの先端は綾香のヴァギナの中にすっぽりと埋まっていた。
 ぶぶぶ…
「うっ…うあっ…」
 ぬめった粘膜に包まれて振動音は鈍い物になっていたが、その低くなった音のぶんの振動は綾香のヴァギナに伝わって官能を引き出している。奥底に響いてくる振動に加えて、バイブの中程の粒々がうねうねと動いてびりびりと快感を与えていた。
 浩之は振動するバイブを綾香の中に突っ込んだまま、綾香の背中の方にまた戻っていく。
「はぅっ…浩之…」
「俺の勝ちっぽいんだが、いいか?」
「う…うっ…」
 だらしなく開かれた脚の間からバイブを生やした綾香に、いつもの気の強さを見出すことは出来なかった。
 浩之は、綾香を背中からがっしりと抱きしめる。そして顔を綾香の髪に埋めて黙り込む。
「はぁ……はぁっ」
 ぶぶ…
 バイブの振動で追いつめられていく綾香の官能を、浩之は抱きしめて逃そうとしない。加速度的に高まる快感に、綾香はとても耐えきれなかった。
「っ!!」
 ビクン…ビクン、ビクンッ!
「うっ…んぅっ」
 綾香の身体が痙攣し、その度にヴァギナが強く収縮してバイブを締め付ける。臨界を越えた綾香の性感を、さらにバイブが責め立てていく。
 …がくん。
 長い絶頂が終わった時、綾香は精根尽きて首を垂れていた。
「俺の、勝ちな」
「ぬ、抜いてよ…浩之」
 力の入らない身体を浩之に支えられながら、綾香はタオルにじっとりと涙を染み込ませ、シーツに液体の大きなシミを作っている。
「いや。罰ゲームってことで、もう少し入れとく」
「や、やめて…お願いだから」
 弛緩しきった身体に恥辱を感じつつも、綾香は浩之の情けに期待するしかなかった。


8/14
 ぎゅっ…
「あっ」
 …ぎゅっ!
「んんーっ!」
 二つの黒いゴムバンドが、綾香の顔に巻かれていた。ひとつは目隠しとして、もうひとつは猿ぐつわとして。顔のほとんどを黒いバンドに覆われた綾香の表情が、不安そうなものになる。
 手際よく綾香の自由を奪ったのは、背後にいるセリオだった。
「んっ、んっ、んー」
 綾香の両手は背中に回され、セリオがしっかりと押さえている。ただ、無理矢理に押さえ込んでいるという様子ではなかった。綾香が本気で拘束を解こうとすれば、いい加減に押さえているだけではとても耐えられるはずがない。
 セリオが非常時用のパワーを発揮したなら綾香を押さえ込むことくらいは互角に出来るだろうが、その様子はなかった。セリオはもがく綾香の手を押さえているだけである。
「んっ…んんっ」
 両手で綾香の手を押さえていたのを、片手だけに変える。そして自由になったセリオの右手が、綾香の脇腹から滑り込んでいった。裾を外に出していたブラウスから入り込み、さらにシャツの下に入り込む。綾香の肌にぴったりと触れたセリオの手は、するすると上がっていく。
「………」
 セリオはいつものような無表情だった。夜風走る空間の中での行為にも、何の感慨も覚えていないようだった。
 一方の綾香は、バンドの拘束とたくし上げられたブラウスのせいで、いつもの自信ある姿を完全に失ってしまっている。弱々しいもがきが、それに拍車を掛けていた。
「んんん…」
 ついにセリオの手は乳房に到達し、ブラジャーの下に入り込む。綾香の豊かな乳房は、三枚の生地の下でやんわりと揉まれて妖しく動いた。
 セリオの滑らかな指の刺激に先端が固くしこり始め、時折ブラジャーの生地に当たるようになってくる。次第に綾香は動かなくなってきた。セリオが押さえていた手を離しても、だらんと両手を身体の横に垂らしただけ。力無く頭を下げ、セリオの行為に身を任せている。
 ごそ…
 セリオは左の腕を回し、綾香の背中に抱きついた。そして綾香の耳たぶに口を近づけ、唇で挟み込む。
「ん…んぅ…」
 綾香はピクピクと身体を震わせて、くたりと後ろに倒れ込んだ。セリオは綾香の身体を支えながら、唇だけのキスを続ける。片方の耳がべとべとになると、もう片方。
 ときどき涼しい風が吹き抜けて、濡れた部分から熱を奪われる。そのピンポイントな感覚が、締め付けるように綾香の心を揺さぶった。
 たっぷりと耳と胸をなぶってから、セリオがとんとんと綾香のお腹の辺りを軽く叩く。
 そうしてから、セリオは胸の下に潜り込んでいた手を出した。そして、両手で綾香の身体を支えながら、ゆっくりと地面に向かって倒していく。綾香の膝は自然にかくんと折れて、無抵抗に地面に向かって屈んでいった。
 …ばさっ。
 最後だけ、セリオは綾香の身体を支えずに、突き倒すような勢いで綾香を地面に放る。砂地の地面から砂煙がたち、綾香の美しいロングヘアは砂でばさばさになった。
 綾香は全身を激しく揺らしながら呼吸していた。口がふさがれているから吐息はほとんど聞こえないが、じわじわとした責めで綾香の感じていたものは十二分に伝わってくる。汚れた白いブラウスとスカートが、可哀想なほどにフィットしていた。
 セリオが屈んで綾香の腰をつかむ。
「んっ」
 そのまま引き起こす。綾香は少し力を入れて、その動作を助けた。
 ぱふ…
 柔らかい砂地の上に両手を突くと、綾香はセリオに向かってヒップを突き出した姿勢になる。犬のような綾香のスカートの中に、セリオは両手を入れた。
 ぐっ。
 セリオが手を下げていくと、多少砂をかぶった綾香のショーツが降ろされていく。その中央部分は液体に濡れていた。そこだけ砂が多くこびりついていて、暗い中でもはっきり分かる。
「………」
 風向きを考えれば、今綾香の秘部には直接風が吹き付けているはずだった。今の綾香の身体は、自らの濡れた部分がどこなのかを否応なしに認識させられてしまうことだろう。
 もっとも、それも長くは続かなかった。
 かさ。
 セリオがポケットから何かを取り出す。闇の中で、それは棒状のシルエットにしか見えなかった。無論、それだけでも用途は明確であるが。
 やはり表情ひとつ変えず、セリオはその棒を綾香のスカートの中に忍ばせていった。
「んー、んー」
 棒がにちゅっという音を立ててヴァギナに触れた瞬間、綾香が一瞬腰を前に引く。しかし、すぐに観念したように腰を後ろに戻し、動きを止めた。それでも、ぶるぶると身体が震えているのは止まらないらしい。
 そこに支えの棒を差し込むような、そういう無造作な動作でセリオは手を前に押し出した。
「んっ…んんんんっ」
 綾香は息を詰まらせたような音を出したが、すぐにそれは無くなった。綾香の性器は、棒をあっという間に奥底まで飲み込んでしまう。
 ちゅぷ、ちゅぷ、ちゅぷ
 セリオはそれをリズミカルに前後に動かし始めると同時に、片方の手もスカートの中に入れた。
 太股を滑り上がった指が、結合部分を避けてすぐ綾香のクリトリスを発見する。視界がなくても、何かのデータによって見つけられるのだ。
「ん、ん、ん、ん」
 同じリズムで抽送とクリトリス愛撫が並行される。セリオは肩でも揉んでいるかのような平然とした顔だったが、実際にはスカートの中で相当ねちっこい行為をしている。棒は綾香のGスポットを突くように正確にコントロールされていたし、指の動きも一度として同じものはなく、上下左右の運動と回転運動を中心に、強弱もつけて、時折デコピンのように強烈にはじいた。その瞬間だけ、綾香はビクンと身体を跳ね上がらせる。それ以外は、小動物のようなおとなしさで行為を甘受していた。
 セリオは疲れの色すら見せず、それを続けていく。綾香がそう長い時間耐えられるはずもない。
「んんー…んぅぅぅぅ」
 綾香が顔を地面につけて、自分の身体をぐいぐいと両手で抱きかかえた。セリオはこれまでの二倍の速度で綾香への責めを行う。
 …ビクっ!
 耐えかねたように、綾香が昇天した。
 ビクっ、ビクっ、ビクンっ!
 綾香は全身を弛緩させ、痙攣に身を任せる。セリオはゆっくりとした後戯でそれを助けた。そのために綾香の絶頂は数十秒も続き、終わる頃には綾香が気絶しかけてしまったほどだ。

「…ありがと、セリオ」
「はぁ」
 パンパンと全身の砂を払いながら綾香が言う。セリオは手に棒と二本のゴムバンドを持ったまま、綾香の事を見ていた。
「早く帰りませんと、長瀬様が心配なさっているだと思われますが」
「そうね。帰ろっか」
「ええ」
 綾香はぐるりと周囲を見渡した。暗い中に浮かび上がった境内は、どこか不気味に綾香達をにらんでいるようにも見える。
「しかし、なぜここでなくてはならないのですか?綾香様の部屋でも、浴室でも…」
「ん。人間の考える事だから…気にしてたら神経もたないわよ」
「…はぁ」
 無表情は維持していたが、セリオも混乱はしているようだった。
「…クリストファ様と何か問題が?」
「どーでもいいのよ、あんなヤツ。私の判断ミスね、ホントに」
「はぁ…」
 綾香は不機嫌そうに道路に出る方向に歩き始めた。セリオは立ち止まったまま動かない。
「…綾香様は、以前ここにいらっしゃったことが?」
「いいって言ってるじゃないの、気にしていると頭がショートするわよ」
「…はぁ…」
 小走りで林の間を駆けていく綾香を、やっとセリオも追い始めた。


6/30
「ね…姉さんっ…なんか、やっぱりこれ変よ」
「…………」
 芹香はパラパラと手に持った分厚い本をめくりながら、綾香に答えた。綾香の手には小さな空の小瓶がある。芹香によれば、そこに入っていた薬には簡単な睡眠薬の効果があるということだった。最近眠れないという綾香の愚痴から、いつのまにかそこまで話が進んでいったのだが…
「え…なに…間違えちゃったみたい?ちょっと…大丈夫だって言ったじゃない」
 ぺこり…
 芹香は頭を下げる。表情の変化に乏しいせいか、あまり謝っているようには見えない。
「それで、これってなんだったの」
「……」
「…ちょ…ちょっと!」
「………」
 芹香の声が、言いながらどんどん小さくなっていった。それでも綾香は聞き取れているのだから、大したものである。
「シャ、シャレになんないでしょっ!どうすんの…直す薬とかないの?」
「…」
「姉さんっっ」
 綾香は困り切った顔になって抗議する。綾香の身体はどんどん熱くなってきていた。綾香は自分の腹を押さえるようにして耐えようとしていたが、それだけではどうしようもなかった。
「どうするのよぉ…これ」
「…、……、…」
「え?」
「………、……」
 芹香が視線を下の方に落としながら、ぽそぽそと名詞を口にする。
「しっ!知らないわよっ、そんなの」
 綾香は顔面を真っ赤にして叫んだ。余裕のなさは、薬の効果がどんどん進行してきている事によるのか、はたまた綾香がこういった事にあまりに無垢であるからだったのか。
 叫んでから、綾香は両手で腹をきゅうぅっと押さえて泣きそうな顔をする。
「あ、頭がおかしくなっちゃうっ…助けて…助けてよ、姉さんっ!」
 綾香は悲痛な声を上げた。それは多少大げさだったかもしれないが、芹香はその声に打たれたように、確信した瞳になって綾香の元へ歩き始める。
「ね、姉さん?なんか、あるの?」
「……」
「え…」
「…ふむっ!」
 芹香の唇が、綾香の唇を優しくふさいだ。
「ん…んっ」
 驚いた目をする綾香。芹香は舌を少しだけ出して、唇の間に滑り込ませてから浅く撫でていく。ゆるめのキスだったが、綾香はひどい戸惑いの色を見せていた。芹香の方もやや戸惑っているようだったが、目に確信が宿っているためか、積極性のようなものすらあるように見える。
「んっ…」
 芹香が唇を離すと、つっ、と細い糸が伝った。
「ね、姉さん…」
 綾香はもう本当に泣き出しそうな顔になっている。今のキスで落ち着いたのか、ますます熱情を煽られたのか、それはわからない。ただ、綾香がこのままで済むわけがないのは確かだ。
「……」
「や、やだ…」
 芹香の言葉に、拒絶の言葉を示しながらも綾香の手は動いた。震える手で、パジャマのズボンをショーツと一緒に下ろしていく。その様子は、普段の綾香と違って非常に幼く見えた。つり目がちな目が、弱々しく潤んでいるせいもあるかもしれない。
「…」
「やだ…やだよっ、こんなの」
 綾香は言いながら脚を開く。どこか操られているようにも見えるが、動かしているのは間違いなく綾香の意志だ。
 ひとつ年下の妹の性器は、思ったよりもずっと幼かった。大人びた役割を演ずるのが好きな少女も、この方面にかけて潔癖であったのは本当らしい。
 芹香は身をかがめ、慎重に綾香のその部分に触れた。はじめは産毛を撫でているような微細な動きだったが、次第にはっきりと綾香の身体に指を這わせ始める。
「こっ…こわいっ…」
「……」
 大丈夫、と芹香は言った。綾香の身体は恐怖のためかか苦悶のためか、ずっと震えている。綾香は、強力な相手に対峙したときにも、自分の身体に打撃を加えられた時にもそんな感覚を感じた事はないだろう。内部から沸き上がってくる感覚には、綾香は全く無力だった。
 一方の芹香は、あまりに冷静な表情で行為を続けている。姉妹の対比は滑稽なほどだったが、どちらもこの事態を何とかしたいという気持ちは同じだ。
「…ひっ!」
 芹香の指がはっきり粘膜に触る。綾香は鋭い声を上げた。
「……」
 大丈夫、大丈夫と子供に諭すように芹香は問いかけた。年の離れていない二人はどちらが年上なのかわからなくなる事も多いが、こういう時には年齢に即した反応の差が出てしまうようだった。
 芹香はゆっくり指を動かし始めた。すると、綾香は上げた声ほどには痛みなどを感じていない事がわかってくる。痛いなら、そう言うだろう。それに、その部分の帯びている熱から、既に快感を感じる準備が出来ているという事を自分の経験から推測できた。
「あ…な、なんか変」
 綾香は少し落ち着いた声を出す。芹香は安心して指の動きを強めた。
「っくっ…そ、そこ…そこ、いやっ…」
 嫌という反応が示すものを芹香は論理的に導いた。芹香は左の手で包皮を剥いて、すぐに右手で直接的にさわり始める。
「あっ…だめっ…姉さん、やめて…」
 綾香は腰やら脚やらをしきりによじらせて、もたらされる強い刺激から逃げようとする。しかし芹香が愛撫しやすいように綾香の腰に左手を回して固定すると、それすらも出来なくなる。後は激烈な感覚が生まれてくるのを受け止めるしかない。
 もはや、綾香にも快感を否定する事が出来なくなってきたようだった。そうなると、行為への恐怖より相手が姉であるという安心感の方が強くなってくる。ふるふると顔を振りながらも、そこにはほとんど拒絶の様子がない。
「ね、姉さん、なにか、なにか来るっ」
「……」
「ひ、ひっ…なに…これっ、おかしいっ…私の身体…」
 綾香がぐぐーっと脚を閉じて、自分の身体を両の腕で抱きしめる。
「っ……!!」
 その瞬間に、温かで透明な液体が少しあふれた。綾香の生まれて初めてのエクスタシーだ。
「…………これで、済んだの」
 それからだいぶ経ってから、消耗しきった顔で綾香が問う。
「……」
「しゅ、習慣性があるってこと!?」
「…………」
「お、おんなじよ…」
「………」
「できないわよっ!そんなこと……私、寝るから」
 綾香はショーツとズボンを上げる。その時、はじめて液体の存在に気づいたようだった。


6/18
「は…離しなさいっ」
 綾香は懸命にもがいた。だが、身体のうち攻撃に使えそうな部位は完全に押さえられてしまっている。不意をついて頭突きを見舞う事すら出来そうになかった。
 身体と身体の闘いを熟知しているからこそ、八方ふさがりの状況になった事ははっきり認知できてしまう。綾香の身体を、一瞬にして絶望が包んだ。」
 男は綾香の身体を押さえながら、宙に持ち上げて隣の部屋に移動させていく。いかに筋肉がついている長身の綾香と言えども、女であるのだから体重はそれほどでもない。男は軽々とした動作で綾香を運んでいった。
 宙に浮かべられた事で、ますます反撃の機会は無くなる。もはや綾香の顔に生気は失われつつあった。
 ヴィ…
 部屋に入ると、機械の音がしてドアが勝手に閉まる。部屋の中に光源は無く、真っ暗だった。
 プシューッ!
「………!?」
 噴出音がする。
 それが何なのか判断する前に、綾香は全身が痺れてくるのを感じていた。
 どっ。
 男が綾香を床に放り投げる。同時に電気が点いた。それによって、一面にマットのような物が敷いてあるのが見えるようになる。だから綾香は床にぶつかる衝撃で痛みを感じる事はほとんど無かったが、その時にはもう身体を動かすことは出来なくなっていた。
 男は闘いの前からマスクをしていた。気づく要素はあったのだ。綾香を後悔の念が襲う。無論、息を止めても時間の問題だったのだろうが、それでも後悔せざるを得ない。
 床に倒れ伏す綾香の身体に、男が近づいてくる。うつぶせの体勢だった綾香は、それを気配だけで感じていた。視界に入ってこない分、焦燥感が煽られる。身体の隅々に汗が生まれていく。
 ぐいっ、と男は綾香のハーフパンツを無造作につかんだ。それだけでハーフパンツが破れてしまうのではないかと思うほど、馬鹿力を感じさせるつかみ方である。逆の手でショーツをつかんで、ぐいぐいと下ろしていく。両の手で別々の着衣をつかんでいる仕草はひどく滑稽だったが、行われている行為を見ていればそうも言っていられない。
 綾香にとっては、恥辱の念よりも恐怖感の方が強かった。防護の役に立つわけでもない薄い服だが、それでも着ていれば、肌が直接敵の目の前に晒されるのに比べて安心感がある。
 男は自分の身につけていたトランクスをずり下ろすと、綾香の身体を再び持ち上げる。子供にするような、腰の辺りをつかむ持ち上げ方だ。
 …やられる!
 声すら上げられない綾香は、叫びだしたい衝動を心の中で駆け巡らせる事しか出来なかった。
 …ずぶっ
「!!」
 やや腰を引いた男のペニスの上に、綾香のヴァギナが着地し、綾香自身の重みによって突き刺さった。図体の大きさに比べれば、この体勢でペニスを正確にヴァギナに突き刺したのは繊細な動作であると言える。
 ずっ、ずっ…
 だが、真っ赤に鮮血を流す綾香のヴァギナに、巨大な怒張を抜き差しする様子は、どう見ても繊細とは言い難かった。綾香はぐったりとして、男の行為に身を甘んじている。目も閉じてしまっており、口元からは涎が垂れて綾香の意識がもはや正常ではない事を示していた。
 しかし感覚だけは鋭敏に存在していた。自らの最も大切な部分が蹂躙され、傷口を熱い物でこすられる激痛がいつ終わるともなく続いている。潤滑の液など無いに等しかったから、摩擦の痛みがますます大きくなっているのだ。
 その峻烈な痛みが、少女としての、愛する男に処女を捧げるという夢を無惨に叩き壊していく。
 涙を流す事すら許されない綾香は、ただそれに耐えるしか無かった。
 その地獄のような行為が何分も続いただろうか?
 どくんっ!
 男がペニスを脈動させ、大量のスペルマを綾香の中にぶちまけた。どくっ、どくっとペニスが打ち震えるたび、綾香の傷ついたヴァギナの中を白濁の液が満たしていく。
 ペニスを引き抜く時にも、ごぷっと重い水音が立つほどの量だった。
 男は、また綾香をマットの上に放り投げる。
「ぅ…」
 綾香は目を開けた。どうやら、小さく声を上げることも出来るようになってきたようだ。もちろん、反撃など夢のまた夢なのだが。
 そして、目の前にある、白い液に汚れたペニスが眼前に迫ってくる。
「え…うぐっ!」
 口の中に、生臭い匂いを立てるそれが突き立てられた…
「ん…んっ」
 綾香は屈辱に打ち震えながら、自らを犯したペニスに舌を這わせていった。




6/4
「ん…んっ」
 くぐもった声が漏れる。
 反射的に逃げようとしたが、背中に回された腕はしっかりと雅史の事を抱きしめており、容易には動くことが出来ない。本気で振り払うなら、相手を突き倒すぐらいしかないだろう。それはためらわれた。
 しかしその一瞬の判断の内に、雅史の唇を割って滑り込んできた舌はうねるような動きで雅史の口腔の中を刺激していく。全く未知な感覚は最初のうち戸惑いしか生まなかったが、次第に痺れるような感覚へと変化していく。段々と力を入れることが出来なくなっていった。
「っは…」
 そして、たっぷり60秒間のキスの後、解放される。
「ねぇ、こういうの嫌い?」
 綾香は口元から落ちた唾液をぬぐいながら言う。
「嫌いって…いうか、僕、綾香さんと知り合って、まだそんなに経っていないのに」
「タメなんだから、敬語じゃなくていいって言ってるじゃない…ま、それはいいけど、佐藤君は私に抱かれるのが嫌かどうか、それだけ聞かせてくれる?」
「ひ、ひとが…」
「さっきカギ掛けてきたから大丈夫」
 綾香はロッカールームの入り口をちらっと見やりながら言った。
「それに、こんな時間に人来ないわよ…ね?」
「………」
 下を向いて黙り込んだのを肯定と取って、綾香は無造作にスカートを脱ぎ始めた。
「あ…」
 雅史は顔を赤らめて目をそらす。
 キスの途中から高鳴り始めた胸が、それとはっきりわかるほど鼓動を伝えてくる。全く見たくないわけではない、でも見てはいけない。そういうギリギリの感覚が、雅史を硬直させる。
 ばさっ、とスカートが床に落とされた音の後に、もっと秘めやかな衣擦れの音が聞こえてくる。そして、ぱさっと軽い音を立てて床に何かが落ちる音がする…。
 雅史は、少し目を上げさえすれば広がっているはずの光景は、あまりに扇情的なものだった。段々生理的な反応を抑えきれなくなってくる。
「佐藤君?」
「は…はいっ」
 思わず、サッカーの練習途中のような声を出してしまう。
 綾香はしーっ、と言って声をひそめるよう促した。
「床に、寝転がってくれるかな」
「………!」
 そうすれば、必然的に…
 雅史は起こってしまう事態を想像してしまい、ますます頬を熱くしながら下を向いていた。
 でも、これは綾香さんが僕に命令したこと…
 そう、命令したことだ…
 雅史は、そうやって思考の一回路を閉ざした。
「………」
 一度床に座り、それから足を伸ばして背中を床につける。ロッカールームの床は埃っぽかったが、上履きで入る場所なので耐えられないほどではない。
 その間横にずらしていた視線を正面に向けると…
「!」
 果たして、雅史をまたぐ形で仁王立ちになっている綾香の姿が目に入ってきた。ブラウスの裾に隠れつつも、何にも覆われない足の付け根の部分がくっきりと目に入ってくる。秘裂自体はほとんどヘアに包まれてしまっていたのだが、雅史はその部分に釘付けになってしまった。
 すぐに綾香は身体を沈めた。そして、雅史のズボンに手をかける。シンプルなベルトを外すと、ホックを外し、チャックをするっと下ろす。
 その間、顔を少し上げた雅史の目には、体勢の関係で左右に少し割り広げられている綾香の秘裂の中が映っていた。細部などまるでわからない、ただ生々しい鮮紅色の肉の色が見えただけだが、雅史はいよいよ核心が近づきつつあることを知り、固唾を飲んで次の動きを待つ。
「腰、ちょっと上げて」
「はい…!」
 うわずった声で雅史は従った。
 綾香は、学生服のズボンとブリーフを一気に膝の辺りまで下ろしてしまう。そこには、精一杯に勃起したペニスがあった。綾香がそれをぴとっ、とつかむと、ひやりとしたタッチが電撃のように雅史の感覚神経をかけずり回る。
 その部分に、綾香は性器を合わせていった。
 さっきに比べても、はっきりわかるほど大きく広げられた秘裂。雅史のペニスのすぐ近くまで来ると、綾香は二本の指で自らそこを広げた。綾香が身体を低くし過ぎているためにかえって見づらくはなったが、秘めた部分を無造作に広げるその動作はひどくエロティックだった。
 そして、ついに雅史のペニスの先端にぬめった感触が生まれる。その位置で、綾香は腰を上げ下げしていた。雅史は焦らされているのかと思ったが、実際には綾香は自らのクリトリスをいじくりながら準備をしていたのだった。まだ愛液の量が足りなかったらしい。
 その体勢が数十秒も続き、雅史がいい加減焦燥感を感じ始めた頃、綾香はぬぷっと一気に腰を落とした。
 雅史のペニスは、ぬめる温かな粘膜にすっぽり包まれている。雅史は、感動にも似たくすぐったい感情を感じ、それ以上に快感を感じていた。
 やがて、綾香が上下運動を始める。それほど激しい動きではない。ぬぷ、ぬぷ、とゆるやかなペースでの運動である。しかし締め付けが強いな事もあって、雅史は十分すぎるほどの快感を感じていた。
「さ…佐藤君」
「はい…」
「気持ちいい?」
「はい…気持ちいいです」
「どんな風に気持ちいい?」
「あ、綾香さんのがすごく温かくって…ぬるぬるしてて…それできつくって」
「そう…」
 綾香は、単調な動きの埋め合わせをするように自らクリトリスをいじくっていた。
「ごめんね…こんな事につき合わせて」
「い、いえ…」
「佐藤君が好きなのは間違いないから…これで嫌いにならないで」
「いえ、そんなこと」
 雅史は言いながらも腰をよじった。もう、腰の奥底から熱いものが沸き上がってしまっている。
「あ、綾香さん、僕もう」
「大丈夫よ…出しても」
「い、いいんですか」
「いいわよ…」
 綾香は、ややピッチを上げて上下の運動を続ける。
「く…うっ」
「佐藤君の…ちょうだい」
「あ、ご、ごめんなさいっ!」
 尿道を何かが駆け抜ける感触。そして、雅史は激しく綾香の中に放出していた…。