名雪[振動]


 カチ…
 出来るだけ静かに、ドアを開ける。
 もちろん、この程度の音で起きるのなら、寝ている名雪を起こすのに普段から苦労などしないのだが。用心には用心ということもある。真琴がいた3週間で俺に身についた姿勢だ。
 部屋の中には、コチコチコチ…やらカチ、カチ、カチやらの時計の音が無数に聞こえていた。それぞれの時計で音を立てるタイミングが合うはずもなく、とんでもない不協和音になっている。やはり、ドアをこっそり開けたのは全然意味が無かったかもしれない。少し緊張してるんだろうか。
 布団の中には、いつものようにけろぴーと名雪の長い髪の毛が見えていた。時計の音がうるさすぎて寝息すら聞こえないので、本人の身体はどうなってるのかよくわからない。とても起きてるようには見えないが。
 俺は念のために足音を殺して名雪のベッドに忍び寄る。
 近くまで来ると、名雪はこちら側を向いてけろぴーを抱きかかえてる姿勢である事がわかった。都合がいい。
 俺はそーっとけろぴーに手を伸ばし、カエル頭をつかんだ。そして一気に名雪の両腕から引き抜く。眠っている名雪が力を入れてくるはずもなく、けろぴーはすぽんと引っこ抜けた。
「けろぴー…」
 あまりにタイムリーでわかりやすい寝言に苦笑する。名雪が起きたわけではない。この程度の寝言はこれまで何回も聞いたことがある。
 名雪は抱きかかえていた両腕を、クロスさせるみたいに下に垂らしていた。
 俺は腕時計の時間を見る。7:40。朝の時間は貴重だ。あまり悠長にはしていられない。時間が掛かりすぎれば、秋子さんが起こしに来る事もあり得る。
 と…いくらでも周りに時計があった。
 こういう時は自分の使っている時計で時間を確認するもんだと自分を納得させ、俺は再び名雪の身体に近づいた。
 布団と毛布を一緒につかんで、めくりあげる。
 いつものように半纏(はんてん)を着たまますぅすぅと眠っている名雪の姿が現れた。女の子の眠っていた布団に特有の、ふわっとして熱っぽい空気が鼻をつく。周りの気温が低いだけに、その不思議な温かみがいっそう強烈に感じられる。
 俺は片足をベッドの上に上げた。そして半纏の裾から名雪のお腹の方に手を入れ、パジャマとショーツを指の先に引っかける。名雪の呼吸と一緒に、お腹がゆっくり動くのが良く分かった。
 意を決して、名雪の着衣を一気に下にずらす。無理な力がかかるし、このタイミングで起きられるかもしれないと覚悟はしていた。
 だが、大丈夫だった。ショーツまで含めて、あっけないほど簡単に脱げてしまう。しかも、名雪は全然起きる素振りを見せず、規則正しい寝息を立ててる。
 俺の前には、半纏の裾に見え隠れする名雪の秘裂があった。呼吸の周期によって、半纏の裾が僅かに上下しているのだ。あまりに無防備な姿勢で秘めやかな部分を晒している名雪の姿は、どこか非現実的な装いを帯びていた。名雪の裸なら普段から見慣れているとは言え、名雪が寝ている状態で秘裂だけを見ることなどそうはない。
 俺は少し躊躇した。だが、時間がない。人差し指をくわえて唾液で濡らし、名雪の秘裂に触れる。
 その部分には、シャワーを浴びた直後とも違う、こもるような熱さがあった。無論、突然名雪を抱いたときに感じる、「出来上がっていない」冷たい感触とも違う。熱いことは熱いのだが、妙に自然な感じで俺を受け入れる熱さなのだ。
 指先に少し力を入れると、にゅるっと秘裂の中に指が入っていく。潤いはほとんど感じられなかった。俺は粘膜自体を必要以上に刺激しないように気をつけて、ゆるゆると秘裂の入り口を愛撫する。
 名雪の身体は敏感だったし経験も豊富だったから、多少乱暴にしても悦ぶ。口では否定していても、名雪はどんどん乱れていく。だが、眠っているという特殊な状況が俺に大胆な動きをためらわせた。
 だから、指先にいつものような液体の感触が感じられた時には少しほっとした。中指を添えて、くっと割り開いてみると、いつの間にか秘裂の中はたっぷりと愛液が満ちていた。いくら眠っていても、肉体は性の反応を返してくるのだ。本人すら知らないところで名雪の肉体が快楽を感じているというのは、妙にエロティックだった。
 俺はそのまま愛撫を続けたいという衝動に駆られたが、それを冷静に静めた。今日の目的は違うのだ。
 尻ポケットから、黒光りする楕円形のボールを取り出す。ウズラの卵を少し大きくしたくらいのサイズだ。
 それを名雪の秘裂に当てて、少し押し込む。その状態で、俺はボールをくるくると回転させて–––潤滑液は豊富だったので、難しい作業ではない–––名雪の愛液に濡らす。すぐにボールは、ぬらりとした光を帯びていった。
 俺はもう一度ボールを指先でつかみ直し、ぐぐっと秘裂の間に押し込んだ。秘裂の間にすっぽりと収まったそれを、下の方、愛液を分泌する部分の方に移動させていく。
「う…ん」
 さすがに身体にかかる負担を大きくし過ぎただろうか。名雪が小さく声を上げる。もっとも、ここまでされなければ反応しないと言うのは、どう考えても鈍すぎるだろう。
 俺は構わず、窮屈そうに秘裂に埋まっているボールをヴァギナに挿入する。
「あ…」
 ぬるんとした抵抗感の後、ボールは名雪の中に飲み込まれていった。
「ゆういち…」
 名雪が半分だけ目を開ける。
「だめだよ…あさから…私…」
 自分の身体の中に突然異物が挿入されたにも拘わらず、名雪の反応は寝ぼけていた。逆に言えば、痛みや恐怖感と言ったものを全く感じていないということだ。
「起きろ。メシ食って学校行くぞ」
「え…」
 どこか納得いかなさそうな顔だ。…当たり前だが。
 俺は名雪のパジャマとショーツをずり上げて元の状態に戻した。たぶん、ショーツにはもう愛液のシミがにじんでしまっているだろう。
「ほら、さっさと着替えろ」
 そう言って、俺はベッドに乗せていた片足を下ろす。無理な姿勢で名雪の秘部を弄くっていたせいか、身体が少し痛かった。
「ゆういち、抜いて」
 抜いてと言っているのに、名雪は布団と毛布をたぐり寄せて自分の身体を隠す。頭だけを布団から出して、俺を上目遣いで見つめる。
 俺は別のポケットから、真っ黒い小箱を取り出した。そこについたスイッチをひねる。
「いやっ!?」
 名雪が雷に打たれたかのように全身をびくっと震わせ、目を閉じる。身体をすくめたために、顔が半分以上布団の中に隠れる。
 そう、リモコン式のローターだ。
 サイズは小さいし、かなり大きなバイブを名雪に使った事もある。だから、今の反応は驚きが先に立ったものなのだろう。
「と、とめて」
 分厚い布団に音は隠されているが、名雪の性器の中ではあのボールが低い振動音を立てているはずだった。
 俺はスイッチを逆にひねる。
 名雪は少しだけ安心したような素振りを見せた。寝起きの悪い名雪も、さすがに今日は完全に起きているようだ。
「それ、今日一日抜いちゃダメだからな」
「祐一…!」
「あんまりやってると、学校遅れるぞ?秋子さんが見に来るかもしれないし」
 そう言って俺は小箱を名雪に見せつけた。ダイヤル式のスイッチを見れば、誰でも強度調節が出来る事くらいはわかるだろう。
「うー…」
 名雪は恨めしそうな目で俺を見た。
「私、着替えるから、出てって」
 この期に及んで着替えるのを見られたくないというのも可笑しいが、俺は黙って部屋を出る事にした。
 …いや、黙ってというわけにはいかないか。
「ショーツは変えるなよ」
「ひどいよ、祐一」


「おはようございます」
「おはようございます、祐一さん」
 俺が居間に姿を現すと同時に、秋子さんは俺のティカップに熱い湯気の立った紅茶を注ぐ。紅茶が入れられているのは、あの、ガラスで出来た妙に本格的に見える奴だ。事実本格的なのだろう。
 水瀬家の食卓には、いつものように二人分の食事が並んでいる。ただし、トーストは俺の分、一枚だけしか焼き上がっていない。俺の起床時間はほぼ7:45で一定だから、それに合わせて秋子さんがトーストを準備していてくれるのだ。
 安心感がある反面、妙に習慣化していて時間をずらすのが怖い。
「名雪、起きました?」
「ええ、今日は起きたみたいです」
「そうですか」
 秋子さんはキッチンの方に姿を消す。名雪の分のトーストとイチゴジャムを準備しに行ったのだ。名雪が起きてこない場合は、マグカップに入ったミルクだけが出てくる事になる。懲りずに駄々をこねる–––無論イチゴジャムに対してだが–––名雪に無理矢理ミルクだけ飲ませて、玄関まで引っ張っていくのだ。
 俺はトーストにバターを塗る。塗る側(そば)から熱でバターがとろりと溶けていくのを見れば、焼き立てであるのはすぐわかる。秋子さんの時間感覚は、恐ろしいほど正確なのだ。
 皿に盛られたスクランブルド・エッグをパンに乗せ、ケチャップをかけてかぶりつく。
「おはよう…」
「お」
 秋子さんが帰ってくる前に、制服姿の名雪が現れた。
 いつもに比べると、どことなくふらついているようにも見えるが、全体的にはおかしな素振りを見せていない。見せるはずがないが。
 イスに座るとき、名雪はちらっと俺を見る。
「あら」
 そこに、秋子さんが、焼き上がったトーストとイチゴジャムのビンを持ってくる。
「今日は早いのね」
「うん…」
 早いと言っても、1分レベルの差のような気がするが。要するに、秋子さんが帰ってくる前に名雪がイスに座っているか、秋子さんが名雪の食事を準備した後に名雪が来るかだ。そんなタイミングを見極められるくらいに、俺は水瀬家の食卓に習熟するようになっていた。一年も同じ家にいるのだから、当たり前かもしれない。
 名雪はもう一度俺の事をちらっと見る。
 さすがに、この場でスイッチを入れる度胸は俺には無い。名雪もそれぐらいは分かっているだろうが、やってる人間とやられている人間では気分も違うだろう。
 俺は何も反応せずに、パンをかじった。
 名雪も何事も無かったかのように、イチゴジャムを思いっきりパンに塗っていく。
 秋子さんは微笑みながら俺達の食事の風景を見ている。
「そうだ、名雪」
「…え?何、祐一」
 少し反応が遅い。
「面接の話、秋子さんに話したか?」
「あ、まだ」
「面接ですか?」
「ええ、なんか進路の絡みで、三者面談やるって」
「そうですか」
「まあ、俺の時も保護者ってことでお願いしたいんですが」
「わかりました」
 この程度の内容では、了承の必要もないらしい。
「俺と名雪の時間、うまくつなげてもらうように担任と交渉しますから」
「お願いします」
「ごちそうさま…」
 その時、名雪がかちゃりとフォークを野菜サラダの皿に置いた。
 時計はまだ8時15分を回ってない。
「今日は余裕持って行けそうだな」
「いつもこうだと、私も助かるんですけどね」
「俺もです」
 一瞬、名雪が嫌そうな目で俺を見る。
「よし、じゃあ行くか」
「…うん」
「気を付けてくださいね」
 秋子さんの見送りの言葉はいつも同じだ。
 靴を履いている時も、名雪は無言だった。だが、始終俺の様子を窺っている素振りは見える。それから、腹部を思い切り屈折させる動きを避けているような様子も見える。
「どうかしたか?」
「どうかしてるよ」
 玄関を出たところで聞くと、名雪はむっとした様子で答えた。
「もう慣れたけど、ここの冬はほんと寒いよな。名雪も身体冷やさないように気をつけろよ」
「祐一より私の方が寒さには慣れてるよ」
「でも、名雪はすぐに寝ぼけるからな。布団きっちり掛けておくの、寝ている間は気を付けないと危ないぞ」
「祐一にね」
 俺はこっそり手の平に握っていたスイッチのダイヤルを、無言で回す。
「ううっ…!」
 名雪の唇の隙間から、くぐもるような声が漏れる。
 切なそうにしかめられた眉と、固く閉じられた瞳。名雪の手は股間を押さえそうに動いたが、すぐに止まる。屋外に出てしまった以上、いつ人間が通りかかるのかはわからないのだ。
「行こうぜ。今日はのんびり行っても大丈夫そうだけどな」
 ローターの出力は最低にしている。一日は長いのだ。
「祐一、嫌い」
 そう言いつつも、名雪は恐る恐るといった風に歩き出した。そして、今度は突然すたすたと歩き出す。俺をすぐに通り越して、そのままのスピードでどんどん歩いていく。
 もちろん、名雪の考えは激しい動きによって振動を忘れてしまおうという所にあるのだろう。
 俺は少し小走りで名雪に追い付き、それから名雪と同じスピードで歩き出した。端(はた)から見れば、朝っぱらからの競歩大会以外の何物でもない。
「このペースで行けば、メチャクチャ早くガッコにつきそうだな」
 名雪は返事をしない。
「教室、多分俺と名雪以外誰もいないだろうな」
 名雪はじろっと俺を見て、
「これから行っても、もう何人か来ているはずだよ。私達みたいな人間ばっかりじゃないんだから」
「そうか。名雪の寝起きがもっと良ければいいんだけどな」
「私、今朝、生まれて初めて早起き出来るようになりたいって思った」
「多分、ムリだな」
 ダイヤルを一気に最強まで回す。
「んーっ!」
 名雪は、さすがに立ち止まってスカートの中に手を入れる。ヴィーッという高速の振動音が、名雪の中からはっきりと聞こえてきていた。
 俺はすぐにダイヤルを切る。周りに誰もいないのは確認済だった。
「はっ…はぁっ…」
「名雪、こんなとこでひとりエッチする気か?」
「い、いきなり、ひどいよ…すごく痛かったんだから…」
 名雪はスカートから手を出そうともせずに、涙をにじませた目で答える。
「誰か来るぞ」
「!!」
 月並みな脅し文句だったが、名雪は慌てて平静を装う格好に戻った。9割方は嘘だと思っているだろうが、だからといって俺の台詞を真っ向から無視するわけにもいかないのだろう。
 俺は名雪を置いて歩き出した。
 しぶしぶといった様子で、名雪もついてくる。ちなみに、スイッチは切ったままだ。
 それから俺達は、会話もせずに淡々と学校への道を歩いていった。学校に近づくほどに、段々とウチの学校の生徒の姿が見えてくる。
「あっ…」
「おはよう、名雪ー」
 十字路に掛かった瞬間、ばったりと香里に出くわした。
 いつものように、名雪の横に並ぼうとする。その瞬間、名雪がまた俺の方をちらっと見た。
「名雪、どうかしたの?」
「ううん」
「また相沢君がなんかやったの?」
「うん」
 内心、ひやりとする。
「説明してると長くなるから、しないけど」
「相沢君、あんまり愛情表現ばっかりしてると愛想尽かされるわよ」
 香里の冷ややかな目が俺に向けられる。ただ、心なしかそれは名雪の方にも向いているように思えるのだが。
「名雪があまりにも起きないからな」
「そういう意味では、相沢君も災難ね」
「香里、災難なのは私の方だよ」
「だから、何があったの?」
「説明しないけど」
「ふぅん…」
「実は、けろぴーの中に時限式の発火装置を内蔵させておいたんだ」
「そんな事したら、私もっと怒るよ」
「子供の悪戯レベルね」
「祐一、子供だから」
 俺は二人に見えないようにダイヤルを少しだけひねる。
「名雪も十分子供だぞ」
「私には同レベルに見えるわね」
「か、香里、変なこと言わないでよ」
「??まぁいいわ。あんまりゆっくりしてると、あなた達に巻き込まれて遅刻ペースになりそうね」
 名雪の返答が微妙に噛み合っていないものになっているのを、香里は気づいたようだった。さすが長い付き合い。
「いや、今日は俺達にしては奇跡的に早い方だぞ」
「確かに、そうかもね」
「私は、嬉しくないけど」
 ペースを取り戻したらしい名雪が、また文句を言った。とりあえず、ダイヤルをまた少し回しておく。


「名雪、少し熱っぽくない?顔が少し赤いみたいよ」
「だ、大丈夫っ。私、いつも走ってきてるから」
 あの後名雪の口数がめっきり減り、トークは香里と俺の間のものになっていた。そこに突然香里が振ったため、名雪はまた変な受け答えをしている。
「そうだな。今日の名雪、少し変だな」
 下駄箱に靴を入れながら、俺も言う。
「相沢君、心当たりはないの?」
「ないぞ。全くないぞ」
「香里、祐一とは関係ないと思うから…」
 名雪は一刻も早く話題を打ち切りたいようだった。俺に対する皮肉を考えてる余裕もないらしい。
「そう」
 少し腑に落ちない顔をしつつも、香里も靴を下駄箱に入れる。その隙を窺(うかが)って、俺はローターのスイッチを切った。
 そのためなのか、名雪の方も、スムーズに下駄箱に靴をしまい終える。
「香里、私と祐一、先生に面談の話があるから」
「わかったわ」
 香里は、他の生徒達と一緒に階段の方に向かっていく。
「祐一」
 名雪が小声でささやいた。
「トイレ行かせて」
「つけてなきゃだめだぞ」
「わかってるよ…ちょっと、汚いからティッシュで拭いてくるだけ。あと、あれ、もっと奥の方に入れてくるの」
「気に入ったのか?」
「ちがうよっ!抜けそうになるのが嫌なだけ」
「わかった。でも、確かめるからな」
「本気!?」
 俺達は職員室の前を素通りしていた。
「ああ。この時間、あそこのトイレの辺りは全然人いないからな」
「見つかったら大変だよ…」
「大丈夫。うまくやるさ」
 そうこうするうちに、トイレの前につく。名雪は、小走りで女子トイレの中に駆けていった。俺は男子トイレの中に入り、誰もいない事を確かめた。それから、廊下の方に目をやる。トイレにつながる通路は廊下に対して直角になっているため、トイレの前で何をやっても廊下の方から見える心配はない。
 ほどなく水を流す音が聞こえ、それからしばらくしてまた水を流す音が聞こえる。
 ハンカチで手を拭きながら、名雪が女子トイレから出てきた。
「誰もいなかったか?」
「うん…」
「よし」
 俺は、スイッチをひねる。今回は隠しもせず、不意もついてない。名雪が不安そうに黒い箱を見つめる前で、ぐいっとスイッチを回す。
「ん…あ…っ」
 名雪が悩ましそうな声を上げる。瞳が、夢見るように潤むのがわかる。ヴ…という小さな振動音が、静かなトイレの前の空間に響いていく。出力は中くらいといったところだ。
 俺はスイッチを尻ポケットにしまうと、名雪の足下にかがみ込んだ。そして、太股に指先をつーっと伝わらせ、股間の状態をチェックする。
 ショーツの生地にたどり着く前に、熱くねばっこい液体の感覚があった。ショーツの生地自体に触れてみると、救いようのないほどぐちょぐちょに濡れてしまっている。その奥からは、確かに鈍い振動が伝わってきている。
「すごいぞ、名雪…」
 立ち上がりながら、俺は言った。
「祐一が…ショーツ変えちゃダメって…言ったんだよ…」
 熱くくぐもった吐息が、名雪の口から漏れている。求めるような、誘うような、恨めしそうな、苦しそうな瞳が、上目遣いに俺を見つめる。
 俺は衝動的に名雪の唇を奪った。
 舌を差し入れようとしたのは、二人ともほぼ同時だった。名雪の舌が、あふれ出る興奮に衝き動かされているかのように激しく動く。俺も、その動きを舌先で追い、ぐにゅぐにゅと絡みつけるようにする。名雪は、キスとフェラチオだけはいつまで経っても上手くならないのだが、今日の名雪には乱暴な積極性だけは間違いなく感じられた。
 名雪は両腕を俺の背中に回し、ディープキスを続けながらぐいぐいと股間を俺に押しつけてきた。ペニスが、痛いほど膨張していくのがわかる。スカート越しに、鈍い振動が微妙に伝わってくるのもわかる。
 本気で抱きたいと思ってしまう前に、俺はぱっと名雪から離れた。そして、ローターのスイッチをOFFにした。
「あ…」
 名雪と俺は2mくらい離れている。そのまま10秒ほど向き合ったところで、名雪はやっと我に返ったようだった。
「いい加減遅刻しかねないからな。行くぞ」
 隅に置いておいたバッグをつかみ、俺は廊下に出ようとする。
「祐一…今日帰ったら、祐一ので、してね」
「…ああ」
 後ろで、何かが擦(す)れる音がした。名雪がティッシュで秘部の応急処置をしているのだろう。
 廊下に出ると、少し空気が清浄な気がした。あの場に今戻れば、名雪の愛液の香りがぷんと漂っているのかもしれない。


 カッカッ、カッカッ!
 黒板の上を忙しくチョークが動き回り、英単語の羅列が記されていく。それをいい加減に黒板消しで消す度に、もうもうとした白い粉が教室中に飛び散る。冬じゃなかったら、窓を全開にしているだろう。
「つまり、この"which conceives of the universe"をカッコでくくると、だ…!」
 忙しい動作に比例して、声もでかい。英語の名物熱血教師、小川だ。受験学年という事もあって、クラスの半分以上の人間は必死でノートを取っている。
 こんな授業じゃなきゃ、危なっかしくてスイッチを入れてられない。
 名雪は机に突っ伏して、寝ているフリをしていた。いつもの事なので誰も気に留めないし、「授業の邪魔をしなけりゃいい」が口癖の小川も全然気にしてない。
 だが、俺は名雪の横に座っているので、名雪が少し腰を浮かせて、ふるふると腰を震わせているのがよくわかった。最弱よりはちょっと強いくらい。それでも、45分も刺激を与えられ続ければ、名雪の身体が相応の状態になるのも無理ないことだ。
 名雪はその後5分間も、微妙な姿勢で快楽に打ち震えていた。
「よし、じゃあ昼メシだ!」
 小川がばたんとでっかいファイルを閉じる。あれを持ちながら50分間立ちっぱなしで授業をしているのだから、元気な人間だ。
 俺が席を立って教室の外に向かうと、ふらふらと名雪がついてきた。
 教室の扉を出てすぐの所にある階段を、俺は無言で上がる。名雪も、同じように上がってくる。
 3年生の教室は4階だ。つまり、そこから上がると屋上になる。
 ガシャーン…
 この季節でも屋上は開放されているが、あまりに寒すぎて全然人が来ない。重い扉を開けると、思いっきり冷気が服の上からも染み込んでくる。マフラーをひっつかんで来たのは正解だったようだ。
「ゆういちっ…」
 名雪が俺の背中にこてんとしなだれかかって来る。
「お願い…して…」
 俺は名雪の方に向き直った。支えを失って転びそうになる名雪の手をつかみ、引き上げる。
「ダメだ。家に帰るまで我慢するって言っただろ?」
「私、そんなこと言ってないよ…」
「家に帰ったらしてって言ったろ?まだまだお預けだ」
「お願いっ、ゆういち…」
「いやらしいな、名雪は」
「やだ…でも…」
「そんなにしたいなら…ひとりエッチしろよ」
「えっ…いやだよ…そんなの…」
「じゃあ、我慢だな」
「変に…なりそうだよ…ゆういち…」
「ちょっとだけ、手伝ってやるから」
 俺は、トイレの前でしたように名雪の前にかがみ込んだ。そして、今度は指先ではなく、顔全体をスカートの中に入れて名雪の性器に近づいていく。
「あ、あ、あ」
 俺の顔が少しずつ秘裂に寄っていくのがわかるのだろう。名雪が不安とも期待とも取れない、引きつったような声を上げる。
「あーっ!」
 べちょっと舌先をショーツの上にくっつけると、名雪はそれだけで嬌声を上げた。
「名雪、声押さえろ…!」
 舌の先には、酸っぱくエッチな液体の味がビリビリ感じられる。
 俺は興奮に駆られ、名雪のショーツを乱暴に引きずり下ろした。少し焦りすぎてショーツを引きちぎりそうなまでに伸ばしてしまったが、何とか両手を使って膝下の所まで移動させる。
 暗くてよくわかりにくい中、俺は顔全体を名雪の両足の間から這い上がらせるようにする。舌先を軽く太股に伝わらせながら、香気と熱気だけで秘裂の場所を探る。
 それは難しい作業ではなかった。太股の大分下の方まで、ねばっこい液体は垂れてきていたからだ。俺はナメクジか何かのように、液体が垂れてきた跡を追って舌を這わせていく。
 俺は足の付け根と思(おぼ)しき辺りで、一端舌を止めた。そして、その部分を執拗に舐め回す。秘裂の一歩手前の部分を、あたかもクリトリスか何かをつついているかのように攻撃する。
「おね…がい…はや…く…」
 名雪は腰をくねらせて俺の舌が秘裂に触れるように試みるが、その度に俺は舌を下に引いた。
 タイミングを見計り、俺はローターのスイッチを最強にする。
「…んっ!ふぅんっ!」
 押し殺した嬌声。拒みの色は、一切無かった。
 俺は舌先を尖らせて、秘裂の間に滑り込ませる。視界はほとんど0だったが、幾度も繰り返してきた行為だけに、何とか位置関係はつかめた。
「あ…あはぁっ…」
 名雪が惚けたような、安心しきったよがり声を上げる。
 俺の舌にも、ローターの振動ははっきり感じられた。これだけ激しい振動を快感として飲み込んでしまう名雪に、自分のした事ながら驚きを感じてしまう。
 名雪の秘裂は、ぬるぬるという感覚では済まない、お湯の中を移動しているかのようなどろどろの状態になっていた。俺はその中で舌をぐりぐりと動かし、クリトリスの方に動かしていく。
「…ぃっ!」
 ぐりゅっとクリトリスを舐め上げると、名雪の声にならない声が上がった。そのはずみで包皮も剥けてしまい、無防備な突起が俺の前に現れる。
 俺はもう一度、今度はつつくようにクリトリスを刺激する。
「あ…ぁっ!」
 名雪の腰が、ぶるっと大きく震えるのが分かった。名雪はセックスの途中で、軽いエクスタシーをよく迎える。しかも、痙攣が必ず起こるため、俺からも分かりやすい。
 俺はそこで行為を止め、名雪のスカートから這い出る。
「ゆ、ゆういち…!?どうして…!あと…すこし…」
「言ったろ?お預けだって」
 名雪は絶望的なまでに目を潤ませ、懇願するような顔で俺を見た。
「やれよ、自分で。俺によく見えるようにな」
 一言二言抵抗するかとも思った。だが、名雪は熱に浮かされたかのように自分のスカートを思い切りたくし上げ、指先をもどかしそうに秘裂に伸ばしていった。
 よく考えると、名雪の中では今でもローターが激しく蠢いているのだ。俺は、一人で二人分の役目を果たしているような気がしてきた。そうすると、10000円の買い物も決して安くはなかったように思えてくる。
 名雪はきゅぅっと目を閉じてから、秘裂に潜り込ませた右手の人差し指と中指をリズミカルに動かし始めた。クリトリスを弾いたり擦(こす)ったりしているのだ。その度に、くちゅっ、ぐちゅっという液体がはぜる音がする。
 名雪の性器は陰毛が少ないため、ぬらぬらと光るサーモンピンクの粘膜が丸見えになっていた。そこをいじめる二本の指の先も、名雪自身の分泌した液体できらきら光ってしまっている。あふれ出た愛液が、たらりと糸を引いて垂れているのすら見えている。
「すげぇエッチだぞ、名雪」
「いや…でも…止まらないよ…」
 名雪がそんな事を言い出すのは、本当にどうしようもないほど身体が高ぶっている時だ。余裕があるときは憎まれ口を叩くが、本当に感じてくるとエッチな台詞を平気で吐く。名雪は変なところで正直だった。
 冬の弱い陽光の下、名雪が一心不乱にひとりエッチをしている。顔には、愉悦と恥情が入り交じっていた。焦らしもせず遊びもせず、どれほどあられもない格好であるのかも気にせずにただただクリトリスを弄くる。しかも、直立した姿勢でだ。
「名雪、イクか?」
「うん…私…イキそう…」
 名雪は弱々しくかぶりを振りつつ、指先の動きはますます強めていく。ぴちゃぴちゃ、ぐちゅっという音がひっきりなしに聞こえる。
「ゆういちっ!」
 かすれた声と共に、名雪がぐぅっと二本の指でクリトリスを押し込んだ。
 立った姿勢は崩さずに、名雪はがくっと頭を垂れた。びゅくん、びゅくんと名雪の全身が震えているのが、ここからでも分かる。快感が爆発したという表現がふさわしい。
 寝転がっている状態で絶頂を迎えたとき、名雪はぼうっとした顔をしている事が多いが、今回の場合は何かに耐えるかのような顔をしていた。直立した状態でのひとりエッチは、何かしら特殊な感じを与えるらしい。
 俺はゆっくりとダイヤルを回し、スイッチを切っていった。
「名雪」
 崩れ落ちそうにしている名雪を抱きかかえる。
「すご…かったよ…わたし…」
「名雪に一人でやらせるのも、なかなかいいな」
「いやだよ…祐一のが…いいんだもん」
「よしよし、家に帰ったらな」
「すぐ…だからね…夜までなんて、待てないよ…」
「とりあえず、服なんとかして校舎入ろう。風邪引くぞ」
「うん…ショーツ、大丈夫かな…」
「ちょっとまずいかもな。このハンカチでも使っとけ」
 俺は綺麗にアイロン掛けされたダークグリーンのハンカチをポケットから出す。秋子さんが毎日用意してくれるからこそ継続できる習慣だが。
「ありがとう…」
 名雪は、まずティッシュを取り出し、淡々と自分の愛液を拭いていった。一通りそれが済むと、俺のハンカチを秘裂に当てていく。そこにも、すぐに拭き切れていない愛液のシミがじわっと広がる。
 ハンカチをそうやって秘裂に当てたまま、名雪はショーツを上げてしまった。
「お…おい…」
「祐一、いつスイッチ入れるかわからないし」
「へぇ、名雪、期待してるんだな」
「違うよっ。でも、困るし」
「そうか」
 俺は先に扉の方に向かって歩いていく。
「待ってよ、祐一。ごはん一緒に食べるんだよね」
「ああ」
「時間あるかな」
「ちょっと急いだ方がいいかもな」
 ガシャーン…
 俺は扉を開けると同時に、食堂に向かって駆け出した。
「あ、待ってよ」
 名雪も駆け出す。今の行為が無かった事であるかのように。


 一応食堂で1回、午後の授業で1回–––3年生ともなると、問題を黒板で解かせるなんて授業はほとんどないので、イスに座っている時だが–––、廊下を歩いている時に1回。
 もう名雪は部活を引退していたので、一緒に帰った。そこで2、3回。
「た、ただいま…」
「おかえりなさい」
 結局、水瀬家についた時には名雪はもうふらふらになっていた。
「あ、面談の件は話つきました。時間とかの連絡が担任から来たら、伝えます」
「そうですか」
 名雪は俺と秋子さんのやり取りにも参加せず、さっさと靴を脱いで2階の方へ歩いていく。
「今日は、楽しかったですか?」
「いや、いつも通りの一日ですけど」
「そうですよね」
 秋子さんが頬に手を当てて微笑んだ。
 俺は冷や汗を感じつつ、平静を装って靴を脱ぐ。
 ガタッ!
「あつーっ…」
 だが、全然リラックスできていなかったようで、上がるときに足を引っかけてコケる。
「大丈夫ですか?」
「ええ、ちょっとボケてますかね…ははは…」
「気を付けてくださいね」
 軽く目を閉じて言う秋子さん。
 小走りになりそうな足を押さえつつ、俺も2階へ行く。


 かちゃっ。
 荷物を部屋に置いた俺は、すぐに名雪の部屋に向かった。
「祐一」
「名雪…」
 名雪は既に服をすべて脱ぎ払い、ベッドにうつぶせに寝転がって俺を見ている。
「あれ、もう抜いたから」
 そう言って、名雪はこたつの上を指さした。そこには、タオルの上に置かれたべとべとの黒いローターと、湿り気を帯びた俺のハンカチがあった。
「そーか」
 言いつつ、俺はトレーナーを脱ぎ捨てる。
「早くしてね」
「わかってる」
 YシャツとTシャツを脱ぎ、制服のズボンも3秒で下ろす。トランクスはどうしようか迷ったが、思い切って脱いでしまった。屹立した俺のペニスが現れる。
「いきなりで、いいよな」
 ベッドに近づいて俺は言った。
「だいじょうぶだよ」
「じゃあ、名雪が上になるか?」
「…うん」
 名雪が身体を起こした。それと代わるように、俺がベッドに仰向けで寝転がる。そして、名雪が足をM字に立てて俺の身体をまたぐ。
「………」
 ペニスに、冷たい指が絡まる感覚があった。今日初めての、名雪からの刺激だ。幾度と無く勃起はしていたため、俺もかなりお預けを食らっていたと言うのは間違いない。
 名雪が子供のような姿勢で腰を落としていくと、やがてペニスの先端に生温かい感触があった。さらに名雪が腰を下げると、先端の部分だけが名雪の中に収まる。じーんとした快感が突き抜ける。
 次の瞬間、ぬるんっと俺のペニスは吸い込まれていった。名雪が一気に腰を下まで落としたのだ。
「あ…入ってきた…」
 ペニス全体がぎゅっと締め付けられる。陸上のせいかどうかはわからないが、名雪の締め付ける力はとにかく強いのだ。搾り取られるような感じで俺のペニスに刺激を与えてくるから、こちらとしてもあまり余裕がない。
「名雪、今日は大丈夫か?」
「うん…今日は、大丈夫だよ」
「嘘じゃないな」
「困るのは私だよ」
「そうだな」
 そう言えば、名雪を抱くようになって以来、秋子さんが俺にくれる小遣いは少し多めになっていた。もちろん秋子さん自身は何も言わない。あの微笑みを浮かべたまま、俺に金を渡してくれるのだ。それを思うと、俺は罪悪感を覚えた。
「じゃあ…いくよ」
 俺の腹の所に手を置いて、名雪が言う。
「ああ」
 ずるっと抜ける感覚がして、ぬるっと入っていく感覚がある。
 そして一番深く入ったところで、思い切り締め付けられる。
 名雪は動きをどんどん速めていった。いつもよりも相当ハイペースだ。セックスの抽送のスピードで言えば、恥ずかしながら俺は名雪に及ばない。運動経験の差が、こんな所に現れるのだろうか。俺にとってはラストスパートに近いスピードを、信じられないほどの時間名雪は続けられるのだ。
「はぁっ、はっ、はぁっ、はぁっ」
 名雪の呼吸が荒くなる。
「どうだ…名雪…」
「い…いいよ、もっと、祐一も、」
 俺は名雪が腰を落とすのに合わせて、ずんと腰を突き上げる。何かにぶつかったような激しい衝撃だったが、名雪は、
「そ…そうっ」
 と悦びの声を上げた。
 結合部では、ぐちゅぐちゅぐちゅと規則正しく粘膜が絡みつく音が立っている。潤滑の液はあまりに豊富で、摩擦感などは毛ほども感じられない。
「名雪…そろそろ…」
「は、はやいよ、祐一」
 名雪の刺激は強すぎるのだ。名雪のあまりうまくないフェラチオで一回出した後や、思い切りクンニリングスをした後とかでないとタイミングが合わない。
 俺はなんとか名雪の絶頂を早めようと、結合部の上にあるクリトリスに手を伸ばそうとする。だが、激しく名雪が動いているため、うまく愛撫するのは不可能なようだった。
「わ、わかったよ、祐一」
 名雪は片方の手を股間に伸ばして、自分でクリトリスを弄くり始める。片手だけで身体を支えている姿勢は不安定そうだったが、何とかバランスを取ったようだった。
「名雪、ひとりエッチ好きなのか?」
「ち、ちがうよっ、祐一が、情けないから、でしょっ」
「でも、うまいよな」
「知らない、よっ」
 言いながら、弄くりながらも、名雪は全然抽送のスピードを落としていないのだ。言葉が時折途切れる。
「俺に隠れてしてんのか?」
「してないよっ!」
「そうは思えないがな」
「祐一が、抱いてくれて、るんだから、必要ないで、しょっ!」
「じゃあ、俺が抱く前はしてたのか?」
「し、しらないよっ」
 名雪はぎゅっぎゅっと締め付けを強くした。
 大分限界が近づいていた俺は、情けない事にしゃべる余裕を無くす。
「名雪、そろそろ…」
「まって、まってよ、祐一」
 名雪はくりくりと指先で弄くるスピードを上げ、逆に抽送のスピードは少し弱める。
 だが、それでも俺はすぐに我慢出来なくなった。
「悪いっ、名雪、出るっ!」
「大丈夫、私も、もうっ!」
 名雪がひときわ強いストロークを打ち込むと、俺はたまらず自分の欲望を名雪の中にぶちまけた。
 それと同時に、名雪が俺に向かってぱた…と倒れ込んでくる。身体全体が激しく痙攣しているのと、その度にぎゅっぎゅっと締め付けが来るのがよくわかった。
「また…イッちゃった…」
「今日、何回目だ?」
「きちんとイッたのは…4回目…かな…」
「まだ、いけるか?」
「うん…」
 名雪は怪しい笑みをにこっと浮かべると、
「これで祐一がやめちゃったら、私、ひとりエッチしたくなっちゃうもん」